国連世界観光機関(UNWTO)によると、世界の海外旅行者数は2016年に12億人に到達し、今後もさらに拡大すると予測されている。一方、観光客の増加に伴い問題となっているのが現地の環境破壊だ。そんななか、最近では観光地の環境や文化に配慮しながら観光を楽しむ「サステイナブルツーリズム」という概念も出てきている。しかし、このコンセプトを国家レベルで義務化したユニークな国がある。それがパラオだ。
パラオが考え出したのが、観光をうまく利用した世界初の環境保護誓約「パラオ・プレッジ(Palau Pledge)」だ。観光客が入国する際、この誓約書への署名が義務付けられ、パスポートにスタンプが押される。
11個のチェックリストがあり、違反すると罰金も課される。例えば、「果物や植物を採らないこと」、「海洋生物に餌を与えないこと」といった「べからず」事項から、「地元のビジネスやコミュニティをサポートすること」、「現地の文化や人について学ぶこと」といった「すべし」事項がある。
観光客だけではなく、パラオ人もこの契約書に署名をしているのがユニークだ。「変化をおこすにはすべての人のコミットが必要である」というパラオ大統領の考えが反映されている。
そして、一番の特徴は、誓約の起草にパラオ中の子どもたちが参加したことであろう。まさに将来を担う「子どもの、子どものための、子どもによる契約書」なのだ。
あまり知られていないかもしれないが、海と熱帯雨林の両方の観光資源をもつパラオは、環境保護で先進的な取り組みをしている国のひとつである。世界で初めてサメの保存区を設けたり、ボトム・トローリングの破壊的な使用を禁止している。自分たちの国と子どもたちの未来を守るために、今まさに行動しているのだ。
国の施策として、すべての観光客に誓約書を義務付けたことに、パラオの環境保護への強い意志を感じる。しかし、海は、国境関係なくつながっていて、地球はひとつなのだ。「パラオ・プレッジ」への署名は、パラオのためだけではなく、巡り巡って私たちのためでもあることを忘れずにいたい。
(※追記:2018年、世界3大広告賞のひとつであるカンヌライオンズで受賞)
【参照サイト】Palau Pledge
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