湖に浮かぶ、美しい家。まるで、水の上で息をしているようだ。
この家は、米シアトルに住む建築家Michelle Lanker氏とその夫のBill Bloxom氏が、「環境を改善し、より豊かにする」というたった1つのコンセプトに基づいて設計した。シアトル市内のユニオン湖に浮かぶユニークな家は、周りの水をきれいにし、水中に新しい生態系を形成する。
NASAの科学者らの発表によると、1992年以降に世界の海面水位は平均8cm上昇したという。今後も海面上昇が続くことが予想され、現在、そういった事態に対策するような建築が注目されつつある。Michelle Lanker氏は、こういった地球環境の変化を考慮し、湖の上から環境を良くするという、これまでとは一味違うコンセプトを取り入れた。
「持続可能性」が、この家の細部にまで渡るこだわりだ。維持の容易さと耐久性の高さという観点から、外装に使用する材料を選んでいる。壁と屋根は厚い絶縁体を使い、耐久性を保ちながら空気漏れを最小に抑えた。
壁に使用したのは、雨による湿気の浸透を防止するセメントの壁パネルだ。屋根の2/3にはソーラーパネルを設置し、残りの1/3は植栽をしている。また、水辺を歩く人が家と水との調和を感じるように、屋根にはカーブをつけたという。
内部の仕上げには廃棄物をリサイクルして作られた材料、そして再利用ができる材料をできるだけ多く選び、竹や杉も利用した。
室温は、Low-Eの三重ガラス窓で快適に保たれる。このガラス窓は、光を中に取り込みながらも、熱吸収は最小限に抑えるのだ。そして、夏季に通気がしやすい場所に設置された窓からは、湖の美しい眺望が堪能できる。
窓は地下の部屋にもある。つまり、水中だ。地下室の壁の窓からは、湖を泳ぐ魚がよく見えるという。まさに湖に住む醍醐味である。
冬季は、湖の熱を吸収する地熱暖房システムで家を暖め、床下の油圧ループを通して温水を循環させるポンプに熱を伝える。さらに、エネルギー効率を高めてコストを削減し、環境パフォーマンスを高めるENERGY STARアプリケーション、およびLED照明設備を使っている。
そして、湖の上という立地条件を活かし、甲板にプラスチックをリサイクルした水中プランターを設置して植物を植えているのが、この家の一番の特徴だ。
プランターが自然の湿地帯の植物生態システムを形成することで、水の中の余分な栄養を食べるバクテリアが住みつき、有害な藻類も成長しにくくなる。その結果、家の周りの水がきれいになり、魚も住むようになるという何とも理想的なシステムになっている。
周りの水環境をも改善してしまう、自然と一体となった湖の上の家。こんな家に住んでみたい。
【参照サイト】Lanker Design LLC
【参照サイト】海面上昇は予想を上回るペース、NASA
(※画像・情報提供:Lanker Design LLC)