大都市に出かけたり、生活をしていて、空気の汚れを感じたことがある人は少なくないだろう。大気汚染は、地球環境に影響を与えるだけでなく、咳や目のかゆみなどの症状をもたらし、人間の健康に多大な被害も与える。
イギリスの首都であるロンドンも、例外ではない。2017年には、大気汚染がひどいことで有名な北京よりも、汚染が深刻であるとされた。さらに毎年、有害大気汚染によって9,000人以上の人々が早期死亡しているという。しかし、そうした事態の深刻さに気が付いていない人が多いのが現状だ。
こうした現状を受け、大気汚染を体験できる施設Pollution Podsが、ロンドン南部のサマセット・ハウスに完成した。
このPollution Podsは、5つのドームからできている。これらの内部では、ノルウェーにあるTautra島、北京、サン・パウロ、ロンドン、ニューデリーの大気状態が安全な化学製品によって再現されている。
それぞれのドームは通路によってつながっており、訪れた人は、ドームから次のドームへ歩いていくことにより、上記地域の大気を体験することができる。ノルウェーのTautra島のきれいな大気に比べ、ほかの4つの地域の汚染された大気を体験できるというものだ。
Pollution Podsを作り出したのは、イギリス人アーティストのMichael Pinsky氏。10年以上の歳月を海外で生活し、ロンドンに戻ったとき、その強烈なディーゼルの匂いと、ほこりやちりのかすみに驚いたという。その後は、定期的に咳が出るようになり、呼吸もしづらくなった。
大気汚染は目に見えない問題である。しかし、自分の身をもって大気汚染を体験してもらえば、現状の緊急性に気が付くのではないかという思いから、Pollution Podsは生まれたのだ。
実際に、施設を訪れて体験した人の多くが、顔をくしゃくしゃにし、鼻をつまんでいたという。なかには、途中で泣き出し、走り出した子供もいたということだ。
いま世界中では、多くの環境問題が起きている。しかし、それらの問題をニュースなどで知っていても、実際に「自分ごと」で考えることができている人は少ないのではないだろうか。そんなとき、このPollution Podsのアイデアのように、生身の身体で感じることで、いま地球上で起きている環境問題を、「自分ごと」に変えやすくなる。多くの人がまず問題に気づき「自分ごと」として行動することが、地球環境が良くなる一歩となるのだ。
【参照サイト】How’s the Air in London? ‘We Should Be Worried’
【参照サイト】POLLUTION PODS
(※画像提供:POLLUTION PODS)