「ベーシックインカムの延長はなし」フィンランド政府が決定

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2017年1月、フィンランドはベーシックインカムの試験運用を国家レベルとしてはヨーロッパで初めて開始した。政府が2,000人の失業者に対して毎月560ユーロ(約71,000円)を支払うこのプロジェクトは、新たな社会保障のありかたを模索する国際社会から大きな注目を集めた。

同プロジェクトは当初の予定通り今年末に終了し、延長されないことが決定した。BBC NEWSによると、フィンランド政府はベーシックインカムとは違う方法で社会保障制度改革を行うことを検討しているという。同プロジェクトの調査結果は2019年末頃に発表される予定だ。

フィンランド政府がベーシックインカムをどう評価するかはまだ明らかになっていない。しかしOECDの経済開発検討委員会(EDRC)は今年2月、低所得層向けの新たな給付制度「ユニバーサル・クレジット」のほうがベーシックインカムより有効だとする報告書を発表している。

ユニバーサル・クレジットとは、所得に関係なく対象者全員に一定の給付を行うベーシックインカムとは異なり、求職者や低所得層に向けた制度である。従来、種類が多く申請が複雑だった求職者手当や所得補助などの福祉手当をひとつにまとめて給付し、受給者の就労促進も目指す。

同報告書によると、ベーシックインカムの資金を賄うためには所得税を30%近く引き上げる必要があり、さらにはベーシックインカムがフィンランドの貧困率を11.4%から14.1%に引き上げ、所得格差を広げると指摘している。一方低所得者が手当を受けやすくなるユニバーサル・クレジットは、貧困率を9.7%に引き下げるとの報告がなされている。

フィンランド議会

ユニバーサル・クレジットの他に政府が検討する仕組みが「負の所得税」だと、フィンランドの社会保険機構Kelaの研究員Olli Kangas氏は言う。負の所得税は、所得が一定水準に満たない人に所得税を課さず、なおかつ一定の給付を行う制度だ。今回ベーシックインカムの試験運用の設計に携わった同氏は、政府がベーシックインカムに傾ける熱意は冷めつつあると発言している。

すべての国民に対して生きるために必要な最低限の金額を給付するベーシックインカム。近年その知名度が高まっている制度だが、ユニバーサル・クレジットや負の所得税といった別の制度も検討されている。

ベーシックインカムに関するデータが十分に揃っていないと言われるなか、フィンランドが2年間に及ぶプロジェクトの調査結果を来年発表すれば、私たちも新たな知見を得られるだろう。福祉国家フィンランドによる評価やいかに。

【参照サイト】No plans to expand Finland basic income trial
【参照サイト】OECD Economic Surveys Finland
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