日差しが強く、コンクリートの路上で立ち尽くしていると身体の表面がとろけだしそうなほど蒸し暑い夏。アイスクリームの美味しい季節でもある。
一方で、冷たいアイスクリームを生産するために、多くの二酸化炭素が排出されていることをご存知だろうか?
アイスクリーム原料の生産、工場から店舗への運搬、包装といった各過程で出る廃棄物が処理されるまでの一連の製品ライフサイクルのなかで排出される二酸化炭素の量は、最大1キロにも及ぶ。これは中型の車が1.6キロ走る際に排出する量の約2倍である。
暑さで火照った身体を冷ますためにアイスを食べれば食べるほど、地球がもっと暑くなるというのはなんとも皮肉な話だ。アイスを食べながら、同じく体温上昇する地球も冷やせるとしたらどうだろう?そんな一風変わったプロジェクトが、いまロンドンではじまった。
青空と草原、牛のパッケージが印象的なアメリカ発祥のアイスクリームメーカー「ベン&ジェリーズ」(Ben & Jerry’s)が、Poseidonというブロックチェーンのグローバルコミュニティと連携し、ブロックチェーンを使って二酸化炭素の排出削減に貢献するカーボンオフセットを導入した。この仕組みは、小売企業として世界初となる先駆的なものである。
まず「ベン&ジェリーズ」がカーボンクレジットを購入する。カーボンクレジットとは、森林保護や再生可能エネルギープロジェクトなどにより実現したCO2排出削減量を取引可能な形態にした通貨のようなものだ。自身の努力では削減しきれないCO2排出量がある場合、このカーボンクレジットを購入することで間接的に自身のCO2排出量を相殺することができる。
そのカーボンクレジットを少額取引に小分けし、ひとすくい分を生産するのに排出された二酸化炭素分のカーボンクレジットをアイスの価格に上乗せする。消費者がはロンドンにある店舗でクッキー・ドウ味とキャラメル味のコーンを買うと、1ペニー(数円)をカーボンクレジット分として支払うことができる。
そして、その購入されたカーボンクレジットは、アマゾンやアンデス山脈での森林保全プロジェクトに出資されるという流れになっている。
今回のプロジェクトのユニークなポイントは、カーボンオフセットの取引にブロックチェーンを利用しているという点だ。ブロックチェーン技術を用いることで、取引データがリアルタイムでネットワーク参加者全員に共有され、透明性が担保される。また、取引する際に金融機関などの仲介者を省くことで、手数料も大幅に削減できるのだ。
この特徴によって、消費者は自分が支払ったカーボンクレジットがどこで使われているのかアプリ上で追跡できる。
また、わかりにくい仕組みや企業向けの売買単価の高さがネックとなりこれまで一般消費者が取り組みにくかったカーボンオフセットが、ブロックチェーンのおかげで、個人の少額取引にも使えるようになった点も大きな一歩だ。
ブロックチェーンという最新テクノロジーを利用することで、消費者が無理なくカーボンオフセットできる仕組み。お店でアイスクリームを買うだけで、自動的に気候変動の解決に貢献することができるなんて、なんとも美味しいプロジェクトだ。全世界に広まって欲しいムーブメントである。
【参照リンク】Ben & Jerry’s
【参照リンク】Issues we care about
【参照リンク】Poseidon Foundation Launches First Retail Platform That Allows Consumers To Support Climate Action Using Blockchain Technology