全世界を熱狂の渦に巻き込んでいる、ロシアワールドカップ。国も人種も、宗教や話す言語だって違う人々が、サッカーという共通の情熱のためだけに集う。プレイヤーやサポーター、皆が共に戦い、笑い、涙を流す。スポーツのもつ、人々を結びつける力は偉大である。
そんな、熱く華々しいワールドカップの約1ヶ月前。同じロシアで「もう1つのワールドカップ」が開催されていたことを知っていただろうか。
その名は、「ストリート・チャイルドワールドカップ」。世界1億5千万人のストリート・チルドレンの各国代表を集めて、FIFAワールドカップと同年・同国で行われる世界大会だ。
2010年の南アフリカ、2014年のブラジルに次ぎ、今年で3度目となる大会を主催するのは、イギリスの慈善団体「Street Child United」。彼らのミッションは、スポーツのもつ力をとおしてストリート・チルドレンに対するネガティブイメージ・偏見を払拭すること。そして子どもたちが、十分な尊厳と理解・権利のもとに明るい未来を生きられる仕組みづくりを、各国の政府やコミュニティに呼びかけることだ。
今年のロシア大会には、世界中から230人の14-17歳の少年・少女たちが集まり、6日間のトーナメント戦をおこなった。南米のボリビアやアフリカのリベリア共和国、旧ソ連諸国や米国など、参加国は21カ国にのぼる。
開会式にて、ロシアのナショナルチーム代表監督のスタニスラフ・チェルチェソフ氏は次のように語った。「恐れず、自信をもって突き進みなさい。自分の実力を発揮するための場というのは、みんなに与えられるべきなのだから」
「ストリートに住んでいたときは、ギャングたちが僕の友達で、仕事仲間だったよ」そう語るのは、タンザニアチーム所属のサッドロック・ジョンくんだ。
「彼らの多くが殺されたり、刑務所に入れられたりするのを見て、次は僕の番じゃないかって怯えてた。そんなとき、サッカーとの出会いが、僕の人生を変えてくれたんだ」
サッカーと出会い、明るい未来への道が開けたジョンくんは、今は大学でコミュニティ開発を学びながらソーシャルワーカーとして働いている。彼は続けた。
「このワールドカップがもつ本当の価値は、サッカーそのものじゃないんだ。世界中の人たちに僕たちの声を届けることをとおして、ストリートに住む子どもたちみんなに『私(僕)って、本当は何にでもなれるんだ』って気づいてもらうこと。そこに本当の意味があるんだよ」
ストリートに住む子どもたち一人ひとりが、才能を生かして活躍できる社会をつくるためには、彼らのポテンシャルを最大限に引き出すことの出来る場と、周りでサポートする人々の存在が不可欠だ。その2つを「物質的支援」という形だけでなく、「ハレの舞台」という華やかなステージを届けることで実現する特別なワールドカップに、心からの拍手と声援を送りたい。
【参照リンク】STREET CHILD WORLD CUP 2018 THE FUTURE DEPENDS ON YOU
【参照リンク】Hundreds of Abandoned Children Meet in Russia for Street Child World Cup