大自然とアートの力で地方再生。新潟の生まれ変わった「光のトンネル」

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あなたは、新潟県の清津峡渓谷(きよつきょうけいこく)という場所を訪れたことはあるだろうか。日本三大渓谷の一つで、目を見張る絶景が楽しめるスポットだ。この清津峡を鑑賞できるトンネルの付近には温泉街もあり、大自然の中で、忙しい日常の疲れを癒すにはぴったりの場所である。

しかし、緑に恵まれたこの美しい越後妻有(えちごつまり)の地域は、深刻な「過疎高齢化」問題に悩まされている。東京23区とほぼ同じ大きさを誇る広大な地でありながら、人口は約6万人。その3分の1以上が、65歳以上の高齢者だ。

地域の魅力をもっと多くの人に知ってもらい、進行する過疎高齢化の流れを止めたい。そんな思いのもと開催されたのは、芸術祭「大地の芸術祭~越後妻有アートトリエナーレ2018~」だ。芸術祭の作品の1つとして、清津峡トンネルが、若き芸術家たちの手によって生まれ変わり注目を集めている。

Image via MAD Architects

リニューアルを担当したのは、中国出身の建築家マ・ヤンソン率いる建築事務所MAD Architects。750m続くトンネルの奥に、インスタレーション「光のトンネル(Tunnnel of Light)」がある。

インスタレーションは、「木・土・鉱物・火・水」の5つのパートに分かれている。最初に入る「木」の部屋の中心には足湯が用意されていて、訪問者はそこで座ってゆっくりしながら、天井に空いた穴から、外の景観を楽しむことができる。

Image via MAD Architects

次に続くのは「土」の道。赤・緑・橙・青色のライトと不思議なBGMの効果で、なんともミステリアスな雰囲気が漂う。

Image via MAD Architects

「鉱物」の空間には小さなドーム状のトイレが設置されているのだが、これももちろんアート作品。外からは中の様子が見えないが、中からは外の景観が透けて見えるという面白い作りになっている。「火」の空間の壁や天井には、雨粒のような形をした鏡がいくつも取り付けられていて、不思議な光景を作り出している。

Image via MAD Architects

そして最後の「水」の空間の景観は圧巻だ。半円形にぽっかり空いたトンネルの先に広がる大自然の風景と訪問者たちの姿が、床一面に張り巡らされた水に映り込んで、なんとも幻想的な空間を作り出している。「鑑賞者」である自分が、作品の一部として美しい光景を作り出す―とても素敵で特別な体験ではないだろうか。

Image via MAD Architects

「大自然とアートの力が、土地や人々に力を与えることができるということ。人と自然のありかたを考えるきっかけを、世の中に与えられるということ。私たちの作品は、それを証明しています」とアーティストは語る。

地域に隠れた魅力を、アートを媒介として掘り起こし、地域再生を目指す越後妻有の芸術祭は、2018年9月17日(月)まで開催中だ。あなたも、ぜひ足を運んでみてはどうだろうか。アートと大自然の壮大なコンビネーションに癒され、良いインスピレーションを得られるかもしれない。

【参照サイト】越後妻有 大地の芸術祭の里
【参照サイト】MAD Restores the Kiyotsu Gorge Tunnel with Artistic Spaces for the 2018 Echigo-Tsumari Triennale