CO2を集めてビールを造る、イギリス生まれの逆転の発想

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イギリス名物といえばパブである。タップから注がれる琥珀色のビールを片手にフィッシュアンドチップスで一杯。2018年夏のはじめ、そんな至福のひとときを揺るがすようなニュースが伝えられた。ビールに注入する泡に使うCO2が不足するという事態に陥ったのだ。原因は、副産物としてCO2を作り出していた化学工場が製造を停止したため。

そこで救世主のように現れたのが、イギリス最大のバイオマス発電所を所有するドラックス社。同社は北ヨークシャー、セルビーの近くに所有するバイオマス発電所から排出されるCO2をビール業界に提供していくために、炭素回収と貯蔵に取り組むパイロットプロジェクトをはじめると発表した。同様の取り組みとしては、ヨーロッパ初となるという。

ドラックス社は、発電所から排出される温室効果ガスの削減方法を以前から模索していた。そこにビール業界のCO2不足のニュースが飛び込んできたというわけだ。

Image via Drax

6ヶ月のテスト期間中、一つのバイオマス発電から実に多くのCO2を回収し、毎日貯蔵する予定だ。その量、570万トン。これは1日あたり3万2千パイント(約1万6千リットル)のビールを製造するのに十分な量に相当し、ヨークシャー市民全員が1パイントのビールを飲むために必要な炭素量を超えるという(※1)。

バイオマス発電は、廃棄物や植物由来のものを原料とするため、発電によりCO2が増加しない「カーボンニュートラル」の性質を持つと言われている。今回の取り組みは、排出されたCO2をさらに有効活用することにつながるため、ドラックス社は、同発電所で発電された再生可能エネルギーを「カーボンマイナス」にすることができると意気込んでいる。

ドラックスグループCEOのウィル・ガーディナー氏は「今回のパイロットプロジェクトについて英国ビール・パブ協会と議論をしていけるのが楽しみだ。このプロジェクトはイギリスが気候保護目標を達成することを確実にしていく可能性があるだけではなく、国内のビール業界が停滞しないよう支援することにもつながる。もちろん我々は、そのことに乾杯したい」と語った。

Image via Drax

また、英国ビール・パブ協会の代表であるブリジット・シモン氏は「ビールは国民に親しまれており、平均的なパブでは1日1千万パイント程度提供している。そのため、昨今のCO2不足は最も困る事態だった。今回のドラックスグループとの議論や、イギリスにおいて新たなCO2資源へのアクセスを増やすことが、CO2不足の再発防止につながるのではないかと願っている」とコメントしている。

バイオマス発電の副産物であるCO2を有効活用したビールの出現。パブのビールがより一層美味しくなりそうだ。

※参考 イギリスの1パイントは586ミリリットル

【参照サイト】Drax could help keep the fizz in the drinks sector