南米最大の人口を誇るブラジルで、大統領選が盛り上がっている。2018年10月7日に行われた投票では、有権者1億4千700万人のうち、投票率は実に79.7%という高さだった。ジャイル・ボルソナロ下院議員が得票率46%で首位に立ち、得票率29%のフェルナンド・アダジ元サンパウロ市長との間で、28日に決選投票が行われる。
一方、ブラジル国内では議論がぶつかり合っており、どちらの候補者にも納得できないとして、投票前に抗議の白紙投票を行うという意見が11%を占めていたことがわかっている。
そこに目を付けたファストフード大手のバーガーキングは、選挙前に店頭でキャンペーンを実施。アンケートで「白紙投票をする」と答えた市民に、お肉の挟まっていないハンバーガーを差し出した。市民たちは、薄っぺらいバーガーの中身が生の輪切りオニオンとマヨネーズだとわかると苦笑い。
空っぽのハンバーガーの包み紙には、こう書いてある。「これは、誰かが選んだ材料のみを入れた空っぽのワッパー(バーガーキングの大型バーガー)です。他の人に選ばせたのだから、文句は言えませんね。」
ハンバーガーに野菜やソースを自由にトッピングする“Have It Your Way”というサービスを提供する同社は、「国の中身を選択する権利があるのに放棄するのは、この味気ない玉ねぎバーガーをかじるのと同じだ」と言わんばかりに、実にユーモア溢れるメッセージをブラジル国民に発信したのだ。
一方日本では、国民の投票への情熱は高いとは言えない。総務省によると、平成29年10月に行われた衆議院議員総選挙では、投票率は53.68%であった。
日本で現代につながる選挙の仕組みができたのは、1946年の日本国憲法公布によるものだ。それ以前の社会体制は、現代の日本の常識と照らし合わせると、かなり偏ったものだったと言わざるを得ない。たとえば初期の民主主義では、婦人参政権は認められておらず、ある時代は全体主義が幅を利かせ市民は自由な言動が許されなかった。
日本の民主主義や自由選挙は、人々が長い歴史の中で努力し勝ち取ってきた、かけがえのない権利である。それを維持するためには、市民の関心や参加が必要不可欠だ。2016年には、18歳から選挙権が認められるようになっている。
ブラジルでは今回の選挙前に、ボルソナロ候補が刺されるという事件があった。暴力は民主主義の原則に相反するものだが、国民の政治への無関心もまた、健全な民主主義を維持するうえでの懸念となる。
今回バーガーキングが若者の大好物ハンバーガーを使って行ったキャンペーンは、人々に選挙投票の大切さを啓発するいいヒントになるかもしれない。
【参照サイト】BURGER KING® | Blank Whopper