アメリカのサンディア国立研究所が、安全に管理できる水素ステーションのモデルを提案した。
現在、世界では気候変動へのアクションの1つとして、化石燃料を使用しない車の利用が注目されている。これから普及が期待されるのが水素燃料車だ。
水素燃料車は航続距離も長く、廃棄物は水のみなど多くの長所を持つが、まだまだ普及まで道のりは長い。その最大の理由は、水素燃料を補充する水素ステーションの数が不足していることだ。水素ステーションは、安全のための設備が高額になってしまう。これは、ステーション設置のための法律の改定が十分に進んでおらず、古い基準のままであることにも起因している。
同研究所は、現在の水素ステーションで供給されている気体水素ではなく、もっと効率のいい液体水素を使うべきだと指摘。しかしその液体水素ステーションにも課題がある。断熱が万全でないと爆発する危険性があること。気体の水素ステーションと同様、水素漏れにも注意が必要なことだ。
今回の同研究所の開発は、この水素漏れの問題の改善に大きく貢献する。
これまで、空気中の水素密度計算は困難であった。液体水素は、漏れると周りの空気も凍結させるからだ。そこで研究チームは、独自のソフトウェアを使って水素漏れの影響を数値化し、水素漏れを起きにくくすることに成功した。
プロジェクトの共同リーダーであるクリス・ラフレアー氏は、「しっかり数値化することによって、人口が密集する都市でも水素の燃料供給が可能になる。」と語る。
このモデルは、アメリカ国内のさまざまな資源を利用して水素の大規模生産を推し進める米エネルギー省のプロジェクトにも使用されるという。このプロジェクトでは鉄鋼製造、化学肥料製造、石油精製、交通などさまざまな分野で水素使用を目指す。
現在、米カリフォルニア州には19の水素ステーションがあり、各ステーションに1個のポンプと1本のホースがあるのみだ。そこで、アメリカ最大の水素燃料小売業者であるFirst Element plans社は、2019年に新たに12か所の水素ステーションを建設する。
同社は、サンディア国立研究所が今回開発したソフトウエアを使って、厳格な科学的実証をもとに建設許可を受けた。他の州も、今後数年で自家用車用と、バスやトラックなどの大型車用の水素ステーション建設を計画している。
また、サンディア国立研究所は全米防火協会と共同で、これまで数十年間改定されてこなかった液体水素の安全法を、当プロジェクトのデータを取り入れて改定していく。これにより、安全な水素ステーション建設が容易になる。
アメリカのサンディア国立研究所が提案する、安全な液体水素ステーション。今後、このモデルを使って法律を見直しながら、多くの分野においても水素が使用されていくことに期待が高まる。
【参照サイト】Some like it cryogenic/Sandia promoting safety of liquid hydrogen fuel stations
(※画像:Sandia National Laboratoriesより引用)