訪日外国人が2017年には2,869万人を記録し、過去最高となった。今後さらにタイやマレーシア、インドネシアの東南アジア諸国からの来日が増えることは確実であり、日本がこれから訪日客数のさらなる増加を望むのであれば、多様な人種への対応が急務である。
こういった訪日外国人の日本旅行への懸念点のひとつは「食事」だ。たとえば、今後旅行者として増えると言われているインドネシアの人口2.6億人のうち、9割程度がムスリムだと言われている。
ムスリムにとって豚やアルコールなどは不法な食べ物であることから、日本に訪れた際には、適切なレストラン探しに苦労したり、スーパーの食品パッケージの表示を翻訳機にかけ、ひとつひとつ確認したりしなければならない。このため、自国から食品を持ち込む場合もあるという。日本ではまだあまり浸透していないが、海外では数が多いベジタリアンやヴィーガンも同様に、これらの食問題に直面する。
そんな中、NTTドコモがムスリムやベジタリアンの食事問題を解決するアプリ「商品棚画像認識エンジン」を開発した。商品棚をスマートフォンなどで撮影するだけで、対象の商品が口にできるものかどうかを判別できる「食品判定システム」である。
まず商品棚を撮影する。そして、撮影された商品の中で、ムスリムやベジタリアンでも口にできる食品が色付きで表示されるので、その商品を確認して購入するというシンプルな流れだ。フードダイバーシティ株式会社の、ムスリムやベジタリアン向けのレストラン検索アプリ「HALAL GOURMET JAPAN」内でトライアル利用が可能だ。
これまでは、ハラル認証のマークが瞬時に判別できる手段だったが、ハラル認証を取得していない商品でも、このシステムによって購入の判断ができるのだから画期的だ。まずはニーズの高いお菓子・スイーツ・おにぎりを対象としている。ひとつひとつの食品ごとではなく、食品棚全体の商品を1度に確認できる使い勝手の良さがポイントである。
2年後に迫る東京オリンピック・パラリンピックに向けて、インフラなどハード面の準備が急ピッチで進んでいるが、食の多様性に対するソフト面の対応はこれからである。2012年に開催されたロンドンオリンピックでは、「食品の持続可能な調達」というフードビジョンを提唱していた。その結果、オリンピック後にも、オーガニックのさらなる発達を含めて持続可能な調達方法が求められていたことは、記憶に新しい。
日本でも今がまさに、「食」について真剣に考えなければならないタイミングなのではないだろうか。この食品判定システムのような、食の多様性への対応が今後も進んでいくことで、訪日外国人が日本で安心して食事を楽しめるようになることを願う。
【参照サイト】NTTドコモ公式