チューリッヒ工科大学の学生チアラ・バイラティ氏が、松ぼっくりをモデルにしたエコなサンシェード(日よけ装置)を開発した。
夏の暑い日、突き刺すような強い日差しが建物に入ってきて、部屋の温度をさらに上げる。快適な室温を保つには、窓やべランダにサンシェードを取り付けるなどして、太陽の光ができるだけ室内に入らないようにすることが大切だ。
日本では手動で開閉するサンシェードが一般的だが、欧州では電動のサンシェードが広く普及している。電動のシェードは自動開閉するためとても便利だが、設置費用などを含めるとかなり高額になり、購入を戸惑ってしまう人も多い。
そんな中、バイラティ氏はエネルギーと設置費、維持費を低く抑える日よけシステムを作りたいと考え、天候が変化すると自動で動く、センサーもモーターも電気も使わないサンシェードの開発を行った。自然素材で作られたこのサンシェードは、建物の窓の上などに設置できる。
このサンシェードのモデルになったのは、松ぼっくりだ。松ぼっくりのかさは湿度に反応して、自然に動く。湿気が高いと鱗片(松ぼっくりの一枚一枚のかさ)はまっすぐのままで、湿気が低くなってくると鱗片は湾曲する。
バイラティ氏はこれをヒントに、繊維が縦に入った異なる種類の板を平行に並べて、湿度の変化で板の角度を調整した。湿気が高い朝と夜は、板はまっすぐで垂直になり、太陽が高くなって空気が乾燥する日中は、板が湾曲して影をつくるのだ。
このシンプルなアイデアを実際のカタチにするまでは、数年もの月日を要したという。2つの難点があったのだ。1つは、素材が制御不可能に変形することを防ぎながら、とても小さな二重層構造を標準の板の長さである0.5メートルまで大きくしければいけなかったこと。2つ目は、このシステムが欧州で普及する電動日よけシェードに比べて非常にゆっくりと作動することだ。
そこで同氏は、木材の縞パターンと層の厚さの比率を調整し、動きを速めることに成功した。また、影を多くつくるために2層の板を組み合わせた。バイラティ氏の発明はすでに、特許を取得している。
チューリッヒ工科大学ヘンガーベルクキャンパスの建物の屋上に設置されたバイラティ氏のサンシェードの下では、今日もそよ風が心地よく吹いている。