クルーズ船の旅が人気だ。いま世界では、300隻ものクルーズ船が存在している。綺麗で快適な、まるで1つの街のように大きな船が、寝ている間に次の目的地まで連れて行ってくれる。
一方で、クルーズ船の運行が環境にかける負担の大きさをご存じだろうか。ほとんどのクルーズ船が現在使用している燃料は、安価な重質燃料油だ。NGOの調査によると、大きなクルーズ船1隻が1日に排出する温室効果ガスは、100万台の車分に相当するという。
この現状を変えようと立ち上がったのが、ノルウェーのフッティルーテン(Hurtigruten)社だ。同社は2021年までに、漁業ゴミや魚のアラ(内臓など、魚の食べられない部分)と液化天然ガスを組み合わせたバイオガスとバッテリーパックで、クルーズ船6隻を運行することを発表した。
フッティルーテン社は17隻の船を所有し、ノルウェー国内のフィヨルド観光などを提供している海洋クルーズ世界大手だ。環境保護に力を入れており、2018年夏にはクルーズ船会社として初めて、船内での使い捨てプラスチック使用を廃止している。
漁業ゴミや魚のアラといった廃棄物でできたバイオガスは、環境にやさしい燃料として、すでにバスなどの比較的小規模な交通機関で使用されている。ノルウェーでは漁業が盛んで、いつも大量の魚のアラが手に入るのだ。フッティルーテン社もここに目を付けた。
「バイオガスをクルーズ船の燃料として使うことは、環境保護への大きな一歩だ。今後、他のクルーズ船会社もこういったバイオ燃料を使用していくようになれば嬉しい。」と、フッティルーテン社のCEOスケルダム氏は述べている。
NGO団体Bellona Foundationの創設者であり代表のフレデリック・ホーグ氏は、「バイオガスを利用すれば、硫黄や窒素酸化物、および粒子の排出を防げる。フッティルーテン社によるバイオガス燃料の導入で、クルーズ船産業がさらに持続可能になることを願っている。」と、語る。
スケルダム氏はこう締めくくっている。「これは始まりに過ぎない。持続可能性は、これからのクルーズ船と旅行業界全般の重要なカギだ。わが社のグリーンテクノロジーと革新への投資は、業界全体における新たな指針となる。私たちの最終目標は、温室効果ガスを出さない船の運航だ。」
漁業ゴミや魚のアラで作られた燃料で動くクルーズ船。このクリーンな船に乗って眺めるフィヨルドは、息をのむほど美しいだろう。持続可能な旅の選択肢が、またひとつ増えていく。
【参照サイト】Grüne Innovation: Hurtigruten setzt auf Biogas
(※画像:Hurtigrutenより引用)