ユニセフ(国際連合児童基金)は12月10日、ブロックチェーン技術を活用してグローバルな課題を解決する企業に最高10万米ドル(約1,100万円)の投資を行うことを発表した。
今回投資先として選ばれた6企業は、新興国でのブロックチェーンプロジェクトに対してユニセフ・イノベーション基金から投資を受ける。これから1年以内に、オープンソースのブロックチェーンアプリケーションを提供することが条件だという。
全50カ国の100を超える応募から選ばれた6社は、次のような顔ぶれだ。
1. Atix Labs(アルゼンチン)
中小企業が資金調達した際の、資金の使用方法とそのインパクトを測定できるプラットフォームを開発している。これはIDEAS FOR GOODでも以前ご紹介した、IBMがケニア行う少額融資サービスとも近い。
2. Onesmart(メキシコ)
新興市場における調達資金の不正使用に対処するアプリケーションを開発し、子供や助けが必要な若者に確実に社会福祉サービスを提供する。
3. Prescrypto(メキシコ)
開発途上国での医療サービスの不足に対処。患者の病歴をブロックチェーンで共有し、ケアのレベルを向上させるデジタルソリューションプラットフォームを提供する。
4. Statwig(インド)
ブロックチェーンによって透明化されたサプライチェーンマネジメントシステムを通じて、ワクチンの効率的な供給を行う。IDEAS FOR GOODでも取り上げた安全な食品流通管理システムにも通じる内容だ。
5. Utopixar(チュニジア)
コミュニティや組織における、合意形成や価値創造に多くの人が参加できるようにするソーシャルコラボレーションツールを提供。
6. W3 Engineers(バングラデシュ)
SIMカードやインターネット接続を使用しない、オフラインのモバイルネットワーキングプラットフォームで、移民や難民コミュニティ内のつながりを強化する。
ユニセフ・イノベーション基金のアドバイザー、クリス・ファビアン氏はこう述べる。「ブロックチェーン技術は、まだ初期段階です。多くの失敗から学ぶことになると思いますが、このテクノロジーを用いてよりよい世界をつくることができると信じています。資金調達や技術支援、社会的弱者の支援などを通して、テクノロジーが公正な成長を遂げられるときが、まさにわれわれが投資する段階なのです。」と語る。
今回の投資は、ユニセフがこれから行う大規模なブロックチェーンプロジェクトの一環だ。組織の効率化のためのスマートコントラクト活用、分散型の意思決定プロセスの構築などを行い、国連や、ユニセフが活動する国々における分散型元帳技術への知識と理解を深めていく。
ユニセフ・イノベーション基金は、他にもデータサイエンス、機械学習、バーチャルリアリティ、ドローン等の分野で、スタートアップ20社に投資している。今回投資したブロックチェーン事業が成功すれば、ユニセフが現在活動する190以上の地域で適用されることになるそうだ。期待を込めて、プロジェクトの今後の進捗を追っていきたい。
【参照サイト】UNICEF’s Innovation Fund announces first cohort of blockchain investments in emerging markets