ヨーロッパ最大手のエネルギー企業ロイヤル・ダッチ・シェル(以下、シェル)はこのほど、自社が掲げる炭素排出量の削減目標と、企業幹部の報酬を連動させることを発表した。同社は2050年までにカーボンフットプリントを半減させるという長期的な目標を持っているが、これから2020年までの短期目標も設定し、目標の達成度にあわせて報酬の額を変えていくという。
京都議定書やパリ協定など、気候変動に対する国際的な枠組みがつくられ、社会全体で環境を守る努力がされている今。化石燃料や石油が問題視され、石油関連企業が難しい立場に置かれているなか、シェルは炭素排出量と役員報酬を連動させた業界初の企業となったのだ。
経営学誌ハーバードビジネスレビューの記事によると、約1,000社のデータから、企業目標と幹部の報酬を結びつけた企業の多くは設定された目標を達成しているそうだ。
シェルは今回、複数のパフォーマンス測定基準によって目標の達成度を測るという。目標を達成するために、企業の業績を操作することを防ぐ目的だ。シェルの2017年の成果報酬パッケージには、事業活動のキャッシュフロー(目標の30%)、業務の成果(目標の50%)、持続可能な開発(目標の20%)などが含まれていた。
また、この成果目標は炭素を減らすという「非財務的な指標」でもあるため、会計年度末に操作するのが難しいこともポイントだ。1年間のガス排出量の最終的な報告は、その年度を終えてからされることになっている。
石油が燃やされるほど収益が上がる企業が、そのガスの排出を削減するという目標は一見矛盾している。シェルの新たな取り組みは、社会全体の利益を考える視点を持ち、企業統治を強化する、成熟した企業のあり方を身をもって示すものと言えそうだ。
【参照サイト】Leading investors back Shell’s climate targets
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