いま世界では、対麻痺(下肢のまひ)のために歩行が困難な人が何百万人もいるという。高齢化が進む国では、今後さらに多くの人が歩行困難になることが予測される。
そんななか、あらゆる「移動」に係わる豊かなモビリティ社会の実現を目指すトヨタ・モビリティ基金が、幅広い分野のイノベーションを支援する世界的財団NESTAのチャレンジプライズセンターと提携。両団体は対麻痺の人々の生活の質を向上する研究についての選考会を行い、世界28カ国80チームの応募の中から、5チームのファイナリストを発表した。
選考にあたっての評価基準は、対麻痺の人の機動性と自立を高めて日常生活の幅を広げること、そして、対麻痺の人の生活環境に合致できるように、彼らと協力して研究をしていくことだ。今回表彰されたファイナリストの研究デバイスは、以下のとおりだ。
- Evowalk(アメリカ):歩行困難者の足の動きをセンサーで感知して筋肉を刺激し、歩行を補助するデバイス
- Moby(イタリア):手動車椅子のユーザーが電動車椅子の利便性を共有して、街中移動を快適にするアプリ
- Phoenix Ai Ultralight(イギリス):動くときの振動をできるだけ排除した、超軽量でバランスの取れた押しやすい車椅子
- Qolo(日本・筑波大学)車椅子ユーザーが、簡単に座ったり立ったりできるようにする可動式の骨組みデバイス
- Quix(アメリカ):速く、安定した機動的な直立歩行を補助するデバイス
5チームは今後、50万ドルの助成金を受け取って研究を重ねる。2020年には、東京で最終優勝者が発表される予定だ。
トヨタ・モビリティ基金のプログラムディレクター、ライアン・クレム氏は、「これらの技術は対麻痺の人だけでなく、より広い範囲のモビリティを必要とする人々の生活を変える可能性を秘めている。今後、5チームが市場に合致するように研究を重ね、デバイスを実用化するのがとても楽しみだ。」と述べている。
歩行困難な人の機動性と自立性を高めて、生活を改善するデバイスの選考会。自動車業界最大手のトヨタがイニシアチブをとっていることから、注目度も抜群だ。社会のさまざまな場面でのバリアフリー化が進む今、車椅子ユーザーと協力しながら日常生活の可能性を広げていく、とてもいい試みだ。
【参照サイト】Toyota Mobility Foundation Unveils Five Visions for the Future of Mobility at CES