外へ出かけなくとも、欲しいものはインターネットで調べ、早いものだと翌日には家に届く、そんな便利な時代になった。しかし、この便利さの代償として、輸送に伴う環境汚染が問題となっている。 温室効果ガス排出量の削減に取り組む国際環境NGOのクライメイト・グループによると、世界のエネルギー利用に関する温室効果ガス排出量の23%を輸送部門が占めるという。
今やデリバリーサービスは暮らしに欠かせないと多くの人々が理解し、より早く確実な輸送を求めることはあっても、われわれの暮らしの根幹である環境への影響に思いを馳せる人は少ないだろう。
そんな中、一つの企業として輸送の改革を始めたのが大手家具量販店のイケアだ。同社は2020年までにアムステルダム、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、上海の5つの都市でゼロ・エミッションの輸送を行う目標を2018年に掲げていた。そして、2019年1月に上海で「輸送をすべて電気自動車で行う」という目標をいちはやく達成したのだ。
アメリカの科学雑誌Scientific Americanによると、上海ではスモッグが原因で何百ものフライトが延期またはキャンセルされるほど、大気汚染が問題となっていたそう。今回の取り組みは環境に対してだけでなく、大気汚染や騒音に悩まされている人々にとっても嬉しいものとなるだろう。
上海で2020年にオープンするイケアストアは、顧客が公共交通機関や徒歩、自転車でアクセスしやすいように、市内の地下鉄に直結させる予定だ。店舗の広さは従来の広大な400,000平方フィートではなく、269,000平方フィートほどだという。
また、輸送車を変えるだけでなく、同社は電気貨物自転車などを使って配達することも検討している。新たなイケアストアでは自家用車がない人でも気軽に買い物に行けるようになり、大きな家具の配送は環境に負荷をかけない輸送手段で行われる予定だ。
これらの計画は、2030年までに自社製品のCO2排出量を70%削減するというイケアのサステナブル戦略に含まれている。この計画の他にも同社は、2020年までにイケア製品と店舗から使い捨てプラスチックをなくすことや、事業全体で100%再生可能エネルギーを使用することを目指している。
消費者のわれわれにできることは、目の前にある商品だけでなく、その奥にある取り組みや考えを見て、自分で何が良いのかを考え選択すること。積極的にサステナブルな未来をつくろうと努力し続けるイケアは、多くの人に支持されるだろう。今後も、同社の取り組みに期待したい。
【参照サイト】Ikea debuts all-electric delivery fleet in Shanghai
【参照サイト】Climate group
【参照サイト】Flights Delayed as Air Pollution Hits Record in Shanghai