あなたは普段、自分の預金がどのように使われているかを意識することがあるだろうか。顧客から預かった資金を企業への投資・貸し付けに回すことで利益をあげる銀行だが、中には、利益を最優先し問題のある事業に資金を流しているところもあるという。例えば、米国の大手銀行Wells Fargoは、過去に「環境への悪影響や文化遺跡の破壊が懸念される地下石油パイプラインの設置事業に投資していた」ことが分かっている。この事実が発覚した際には、多くの顧客が預金を引き出す事態となったという。
口座を引き揚げることは、顧客が企業活動に対して抱く不満を表す一つの方法ではあるだろう。だが、経営方針を決める権利を持たない顧客側が、継続的なエシカル運営をするよう銀行に働きかけるのはそう簡単なことではない。
そこで登場したのが、顧客の意思を尊重した投資を行うオンラインバンク・プラットフォーム「Good Money」だ。立ち上げたのはThrive Market(オーガニックECサイト)の創始者Gunnar Lovelace氏。
サービスに登録すると、Good Moneyの普通株の一部が割り当てられる。会社の部分的なオーナーとなった顧客の投票によって、銀行の投資先が決定するのだ。投資先の候補となるのはクリーンエネルギーや森林再生など「サステナブルな事業のみ」。Good Moneyが上げた収益の50%は、インパクト投資(利潤追求だけでなく社会的・環境的に良いインパクトを与えることを目的とした投資)と慈善寄付に充てられる。顧客は無料で登録が可能で、ATMでの引き出しにも費用はかからない。
Lovelace氏は「大手銀行が荒稼ぎのために使ってきた資金の一部を獲得し、地球環境を改善し未来まで守りつぐための資金として使っていきたい」と語る。そして、顧客たちに「自分たちには、資本主義の中であっても社会にポジティブな働きかけをする力がある」と思ってもらいたい、という。
世の中のために大それたことは出来ないと考える人でも、自分の預けているお金が倫理的で健全な投資を通じて世の中のために役立てられるとしたら―これは非常に手軽な社会貢献の方法ではないだろうか。
【参照サイト】Good Money