製品開発や製作の工程にかかる時間やコストを削減することができる3Dプリンター。様々な会社が多種多様な3Dプリンターを開発・販売しているものの、環境に配慮した素材を使おうとする企業は未だに少ない。
そんな中、ベルギーのスタートアップ「Colossus」が「廃棄プラスチックにセカンドライフを与える」環境に配慮した3Dプリンターを開発した。Colossusがこだわったのは製品プリントに使う材料(紙プリンターでいうインクにあたるもの)に廃棄プラスチックからできたリサイクル材を使用できるようにしたことだ。
Colossusはもともと、クライアントから集めたゴミを新たな製品に作り変えて返すエコサーキュラー・プロジェクト「The ONE」を行っていた。その際に受注した「廃プラスチックから家具を作りたい」という案件で3Dプリンターに関する調査を行ったことが今回の製品を開発するきっかけになったという。
市場に出回る3Dプリンターを調査したところ、既存製品にはそもそも高温溶融が必要なリサイクル材に耐えられるものが存在しないということがわかった。3Dプリンターを独自に開発することを決意。そして、どんな再生プラスチック材料にも対応する耐熱温度400度のプリンターをついに完成させた。
製品の原料として使用可能な再生プラスチックは、さまざまな製品づくりに汎用できるペレット(粒状素材)の状態で出回っていることが多い。Colossusが採用している造形方式はFGF(Fused Granular Fabrication)方式と呼ばれるFDM方式(熱溶解積層方式)の一種で、高温で溶融した素材をノズルから押し出し層状に重ねることで造形する。FDM方式の素材にはペレットを糸状に成型したフィラメントというものを使うのが一般的だが、Colossusはペレットをそのまま使える仕様。いちいちペレットを成型しなおす必要がないため、より多くのリサイクル素材に対応することができるという。
また、大型プリンターでありながら輸送を前提に設計されているのもColossusの大きな特徴である。これにより、余計な輸送コストや輸送時の排気ガス等による環境負荷が軽減される。持続可能な未来をつくるために「従来のやり方に取って代わるサステナブルな選択肢がある」ということを広めたいというのが彼らの願いだ。いずれは地域の公園にColossusを設置し、地域住民が持ち寄った不要なプラスチック製品を家具やモニュメントに作りかえられるようにするのが夢だという。
作成可能な造形物のサイズは3.0m x 1.1m x 1.6m。1時間に最大14kgのプリントを行うことができるスピードで、要望に応じてカスタマイズすることもできる。現在、予約受付中とのことだ。
最終的には廃プラスチック製品の裁断、分別、洗浄のプロセスを1台のプリンターでできるようにしたいというColossus。ビジョンの実現に向け、現在オランダのベンチャーとプロジェクトを進めているという彼らのこれからに期待だ。
【参照サイト】The One Project
【参照サイト】The Colossus Project