ラッシュジャパンとバリューブックスの事例から考える、サステナブルな企業文化を育てる秘訣とは?

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ゴミ処理や労働環境など、企業で働いていると、社会的な問題に直面する機会があるだろう。しかし、それらを社員一人ひとりが「自分ごと化」し、アクションを起こすことは難しいと感じている企業は多いのではないだろうか。

2019年2月28日(木)、ビジネスを通して社会問題の解決を目指すサステナブルな企業・団体が集うイベント「サステナブル企業の集い:Operation Green」が開催された。イベントには、常日頃からビジネスで環境問題に対峙しているどうかにかに関わらず、サステナビリティに興味や問題意識を持つ人々が参加者として集まった。

会場入り口では見た目もうつくしいヴィーガン(ビーガン)スイーツが並べられた

社会改革を起こす人と団体を支援する一般社団法人Earth Company(アース・カンパニー)が主催となり、サステナブルな企業の代表として株式会社ラッシュジャパンと株式会社バリューブックスの2社を迎え、環境問題に対する取り組みやサステナブルな企業文化の築き方まで幅広く共有、議論した。

本記事の前半はゲスト企業2社がそれぞれ取り組んでいるサステナブルな活動を、後半は2社が「サステナブルな企業文化」をつくることができた理由を明らかにしていこう。

全社で取り組むプラスチックゴミ削減活動/株式会社ラッシュジャパン

窪田とも子氏

窪田とも子氏/株式会社ラッシュジャパン アースケアチーム所属。ビジネスが環境に与える負荷を削減し、ポジティブなインパクトを生み出すために多岐にわたる活動をリードしている。

ラッシュといえばカラフルなバスグッズやスキンケア製品で知られているが、実は環境に配慮したプロダクト作りを徹底している企業としても名高い。プロダクトすべてがベジタリアン、8割以上はヴィーガン。化粧品を作るにあたり、動物実験には断固反対している。

窪田とも子氏が所属するアースケアチームは、地球環境にポジティブな影響を与える活動を社内外に普及させる役割を担っている。活動の一貫として実施したフィールドワークでは、社員が茅ヶ崎海岸のマイクロプラスチックを採取する企画をおこなった。

第一印象はきれいな茅ヶ崎海岸だが、実際に探してみると人工芝や田んぼで使われている液体肥料のチューブなど、多くのマイクロプラスチックが見つかった。フィールドワークを通してプラスチックゴミ問題に関する見た目と内情のギャップを知ることで環境問題を目の当たりにし、社員自身が「消費する責任とは何か」を考える機会を提供している。

「環境問題をビジネスの中心として捉え、意思決定の際に必ず考慮する」と社内の環境ポリシーで謳うラッシュジャパン。同社の強みは、ポリシーの中だけでなく、実際に全社の取り組みとして根付いているところだ。ここからは、ラッシュジャパン全体で取り組むプラスチックゴミ削減の活動を3つご紹介したい。

01. プラスチックゴミを生み出さない、パッケージフリーの「ネイキッド商品」
ラッシュのネイキッド商品

ラッシュのネイキッド商品

ラッシュの商品といえば、パッケージフリーの販売スタイルが特徴のひとつだ。ラッシュではパッケージフリーの商品を「ネイキッド商品」と呼んでおり、日本では2016年3月から販売を始めている。今や見慣れた光景ではあるが、導入当初は一筋縄ではいかなかったようだ。日本人のきれい好きな性格上、店頭で誰でも触れられてしまう商品は受け入れられないのではないか……。そんな不安を抱えたまま恐る恐る始めると、意外にもお客さんから返ってきた反応はポジティブなものだった。

商品を自由に触れて、香りも直に楽しめる。手に取ってもらいやすくなり、ネイキッド商品の販売を始めてから、一部商品で販売前よりも売上があがったものあった。環境へのポジティブな影響、そして会社の利益にも繋がった好事例だ。

02. 使用後の空容器回収の取り組み
プラスチック容器回収の取り組み

プラスチック容器回収の取り組み

ラッシュの商品で使われている容器は100%再生プラスチックで作られており、使い終わればまたリサイクルが可能である。プラスチックを使う以上はリサイクルを徹底しようという信念から、「店頭に使い終わった容器を5つ持ってくると、フレッシュフェイスマスク1枚と交換する」取り組みを実施している。今では認知が広がり、ラッシュがビジネスを展開する49の国と地域で最も高い30%前後の容器が回収できているそうだ。

一度使われた容器は、またラッシュの容器として生まれ変わる。「消費者は自分が使ったプラスチックの生まれ変わり先を“選択できる”ことが一番の魅力だ」と窪田氏は語る。消費者を巻き込み、環境にも人間にもやさしくあり続けている。

03. オフィスからプラスチックゴミを排除

プラスチック削減の取り組みは店頭だけで終わらない。ラッシュジャパンのオフィスでは、さらに思い切ったプラスチックゴミ削減対策をおこなっている。驚くことに、社内の自動販売機にペットボトルを一つも置いていない。2014年から、社内の自動販売機で販売するすべてのペットボトルをアルミ缶もしくはビンに置き換えたそうだ。

それまで年間7万2000本出ていたペットボトルのゴミは、遂に0へ。さらに昨年夏からはペットボトルの持ち込み自体を抑制するため、ペットボトル用のゴミ箱すら撤廃してしまったというのだから驚きだ。

「私たちは地球でビジネスを“させてもらっている”ので、地球を守りたいと思っています。そもそも環境が悪化してしまえば原材料が手に入らない。また、私たちのビジネスによって自然を壊すことは決してあってはならない。」と窪田氏が力強く語る様子からも、ラッシュジャパンでは地球を守る意志をブランド全体で共有していることが想像できる。
 

経営指標に“社会的インパクト”を。Bコーポレーション取得までの道筋/株式会社バリューブックス

鳥居希氏

鳥居希氏/株式会社バリューブックス 取締役。「本を通して人の生活、社会を豊かにする」を理念に掲げ、古本の買取と販売事業をおこなう。世界に広がるBコーポレーションの認証取得を目指している。

バリューブックスは2007年創業の、古本の買取と販売をメイン事業に据えた会社だ。もともとリユースを前提にした事業ではあるが、事業に取り組むうちに大きな課題にぶつかった。

毎日2〜3万点の古本がバリューブックスの倉庫へ送られてくるのだが、うち約半数は買い取ることができない。販売できない古本は、古紙回収に回すことになる。そこでバリューブックスは、古紙リサイクルとして本を処分する前に、できるだけ本としての状態のままリユースできるよう、販売不可の古本を学校や社会教育施設に寄贈する「ブックギフトプロジェクト」をはじめとしたさまざまなプロジェクトを行なっている。

これまで本を基軸として社会と価値を共有できるような活動に精力的に取り組んでいたバリューブックスが、今新たに挑んでいることがある。それが「Bコーポレーション」認証の取得だ。

B corporation

B corporation via bcorporation.net

Bコーポ―レーションとは、ビジネスの力を使って社会や環境によい影響をもたらす会社に与えられる認証だ。アメリカの非営利団体「B Lab」が運営している民間認証制度で、企業の経済的な成功だけでなく社会や環境に対するインパクトや透明性、説明責任を包括的に評価し、ビジネスの成功を再定義するムーブメントを生み出している。

Bコーポレーションを取得するためには、「B impact Assessment」という独自の評価基準を満たす必要がある。現在Bコーポレーションの認証を取得している企業は世界で2778社であり、そのうち日本で取得している企業は6社だ。

メモを取りながら真剣に耳を傾ける参加者の方々

なぜバリューブックスが、Bコーポレーションの取得を目指すのか。取締役の鳥居氏は「自分たちの現在地を把握して、ビジネスを進める指針を得るため」と語る。

「もともと寄付の文化や、地元の人々とのつながりを大切にしている会社だからこそ、経済的な決算書だけでなく、Bコーポレーションのような包括的な成績表を作りたいと考えました。人間って意外と、まっとうに生き続けるのは難しい。たとえビジネスであっても地球で生きる人間・会社として果たすべき責任を忘れないようにしたいと思い、今挑戦している最中です。」

社員の自発性をどう育てるかが、サステナブルな文化の鍵

パネルディスカッションの様子

イベント後半のパネルディスカッションでは、Earth Companyの共同代表・濱川知宏氏がモデレーターを務め、サステナブルな企業文化を築く秘訣に切り込んだ。

ラッシュジャパンのキーワードは、スタッフが「自分で考えて、自分のことばで伝えていく」習慣だ。年に一度全国の店長が集まる「店長会」ではエシカルな考え方を強制的に“教える”のではなく、店長自身が“どう感じ、考えたか”が重視される。

それぞれの店長はここで得たことを各店舗に持ち帰り、自分のことばでスタッフに伝える。スタッフもまた、自分のことばでお客さんに伝えていく……。これを積み重ねることで、各々が環境問題を自分ごととして捉え発信するポジティブな循環が生まれるようだ。

パネルディスカッションの様子

一方、バリューブックスは組織体制の変革がひとつの要因だと挙げる。去年から上司部下の関係を撤廃し、個々人に権限と責任を与える「セルフマネジメント型」の組織体制に切り替える大胆な変革をおこなった。この変革後、さまざまなプロジェクトが社員から自発的に生まれるようになったそうだ。障害や様々な事情のある方の就労体験や採用の仕組み化など、お互いの違いを理解しあえるような組織であるための活動が草の根的に生まれ盛り上がりを見せている。

サステナブルな文化が生まれた背景やストーリーはそれぞれ異なるものの、社員一人ひとりの意志を尊重し、自発性を持つように組織から促していることが共通項と言えるだろう。

100年先をつくる、サステナブルな企業を作るために

登壇者と参加者で集合写真

イベントを通してもっとも印象的だったのは、地球において“ビジネスをさせてもらっている”企業としての責任感だ。ビジネスを続けていくために利益の創出は欠かせないが、地球環境の悪化で原材料が取れなくなったら、生き物が住めない状態になったら、そもそもビジネスは成り立たない。100年続く長寿企業となるためには、ビジネスに関わる環境、社会を守っていかなければならないのだ。

本イベントのタイトルにもある「Operation Green Project」は、Earth Companyが提供するサステナブルな経営に本気な企業同士が学び合えるWeb上のプラットフォームだ。企業のオペレーション領域を中心に、会社が環境や社会と共生していくために必要な情報や事例が蓄積されている。

これらのツールを活用しながら、ラッシュジャパンやバリューブックスのようにビジネスの成功に社会・環境の視点を取り入れ、100年先を見据えた企業を目指してはいかがだろうか。

【関連ページ】Bコーポレーションとは・意味
【関連ページ】サステナビリティとは・意味