日常的にエシカル消費(環境保全や地域・社会へ配慮した消費)をしたいと思ったとき、一つの方法として、エシカルな取り組みに熱心な企業がつくっているものを選ぶ、ということがある。とはいえ、どの企業の製品・サービスを買えばエシカルなのか、反対にどの企業がそのような取り組みに熱心でないのか、知る機会はなかなかない。
そこで今回ご紹介する取り組みは、企業のエシカルな取り組みについて市民目線で調査、評価した「企業のエシカル通信簿」だ。
「エシカル通信簿」の結果は?
去る3月19日、第3回「企業のエシカル通信簿」の結果発表会が東京・聖心女子大学にて開催された。第1回(2016年)は食品業界とアパレル業界、第2回(2017年)はコンビニ業界と宅配業界を調査。そして今回は、家電業界と外食チェーンの調査が行われた。
調査を行なったのは、消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク。環境や人権、アニマルライツや消費者問題など多様な分野で活動する39の団体で構成されている。調査項目は「持続可能な開発(表中SDと省略)」「環境」「消費者」「人権・労働」「社会(社会貢献)」「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」の7項目。
それぞれの分野で専門的に活動するメンバーが調査票を作成し、公開情報に基づいて調査を行なった上で各社に送付。内容の確認をしながら回答を作成し、評価を行なった。レイティングは1から10(10が最優良)である。今回調査対象となった企業と結果は以下の通りだ。
良い点・悪い点を明確にすることで、改善できる
発表会では、各項目の調査担当者から、主な調査概要が紹介された。たとえば「家電は全般的にSDGsの取り組みが進んでいる」「日本マクドナルドとパナソニックがESD(持続可能な開発教育)に取り組んでいる」「ソニーは鉱山開発による生物多様性破壊を考慮し、新規材料の利用料ゼロの目標を掲げている」「パナソニックと日立アプライアンスは自社、サプライヤー共に児童労働・強制労働の禁止、労働者の権利保障に取り組んでいる」といったグッドニュース。
しかし一方で、「家電は概ね気候変動に取り組んでいるが、外食は省エネ以外ほとんど気候変動に対する取り組みが見られない」「外食で添加物、トランス脂肪酸、環境ホルモン、遺伝子組み替え製品に対するの取り組みはほとんど見られない」「外食でアニマルウェルフェアのポリシーがあったのは日本マクドナルドのみ」と、改善点を指摘する内容もあった。
「企業のエシカル通信簿は、消費者が行う身体検査」。識者からのコメントとして、東京都市大学の名誉教授であり日本エシカル推進協議会会長の中原秀樹氏がこう述べた。身体検査をすることによって、どこをどう改善したらいいかがわかるというものだ。
もう一人の識者である損害保険ジャパン日本興亜株式会社CSR室シニア・アドバイザーの関正雄氏は、自身が企業人でもあることを述べた上で「評価の中身を開示し、企業にフィードバックをして、改善につながっていけば有効な仕組みとなる」と指摘。評価した後も企業の取り組みの進展に着目することの大切さを強調する。
また「企業はまちがいなく、消費者の厳しい目によって鍛えられる。これがSDGs達成の力にもなる」とエシカル通信簿の意義を語った。
消費者自身の“グッド”な選択が欠かせない
質疑応答時間では、「外食が家電と比べ、おおむね取り組みの度合いが低いことはなぜか?」と理由を尋ねる質問が出された。これについては、外食は日本マクドナルド以外、回答がなかったため取り組み情報が得られなかったこと、外食チェーンは海外のNGOなどの批判を受けにくい業界だからではないかと思われる、といった説明があった。
大学生からは、「企業は、スマートフォンを主な情報源とする若者にも、ぜひ積極的に情報発信をしてはどうか」といった提案も出ている。また、参加者からは「自分の日常生活で消費する責任を考えて生活していきたい」といった個人としての感想から「企業内の教育と意識向上に寄与できると思う」といった企業人としての立場からの感想も見られた。
日本でエシカル消費を進めていくためには、それぞれの企業の取り組みも重要だが、今回の「エシカル通信簿」のような情報をもとに、エシカルな取り組みにはげむ企業の製品を優先的に選ぶ、という消費者の行動も欠かせない。社会に貢献する会社を選ぶか否かは、自分次第だ。
これから企業と消費者がタッグを組みながら消費をもっとエシカルなものにシフトさせていくことができれば、持続可能な社会の実現を加速させることができるのではないだろうか。
【参照サイト】第3回エシカル通信簿調査票および調査結果
【参照サイト】第1、第2回エシカル通信簿調査結果
【関連ページ】持続可能な開発目標(SDGs)とは・意味