【SB2019Tokyoレポ#4】社内の分断を「対話」で乗り越える。 システムコーチングによる合意形成ワークショップ

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昨今、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を経営の指針とする企業・団体が増えてきた。一方で、同じ企業のなかでも「きれいなビジョンだけが一人歩きしている」、「CSR部門だけの独自活動にとどまっている」という声があがることがある。一部のCSR担当者だけが熱くなり、他の人々が冷めた目で見るという対立の構造もある。こうしたチーム内の「分断」は、どうしたら乗り越えられるのだろうか。

『サステナブル・ブランド国際会議2019東京』の1日目には、そんな課題をテーマとしたセッション&ワークショップ「分断を乗り越えるサステナブルな組織づくりとは? システムコーチング®︎による対話型合意形成の体験ワークショップ」が開かれた。

後半には、組織の関係性をコーチングする専門家が指揮を執り、参加者たちが実際にチームに分かれて合意形成の体験をする場面も。セッションは他の部屋から隔離されたミーティングルームではなく、企業のブースが並び、人々が自由に行きかう大ホールで行われるなど、会場選びにもこだわりがあった。セッションの内容を一部抜粋して紹介する。

セッションのようす

左から東氏、森川氏、元木氏

セッション登壇者
  • Facilitator:株式会社SYSTEMIC CHANGE 代表取締役/コンサルタント/組織変革コーチ 東 嗣了 氏
  • Panelist:認定NPO法人かものはしプロジェクト 共同代表 本木 恵介 氏
  • Panelist:株式会社ウエイクアップ CRRジャパン グローバルファカルティ 森川 有理 氏

分断を乗り越えるカギは「相手への理解」にあり

“どんなに素晴らしい社会的ミッションを掲げてサステナビリティ戦略を策定しようと、組織内・外の意識の乖離があっては、真の変革は生まれません。” これは、 本セッションのメッセージとして、参加者に事前に共有されていた東氏の言葉だ。

児童買春問題の解決をミッションに掲げるかものはしプロジェクトの本木氏は、自身のインド・ムンバイでのプロジェクトを振り返り、こう述べた。「同じ目標に向かっているのに、同じチーム内でけんか・対立が起こる。一番難しかったのは、怒りなどの感情のコントロール。」

ムンバイのパートナー企業と共に行った同プロジェクトでは、企業同士の競合意識や想いの違いから、さまざまな対立があったという。チーム内で感情をぶつけあうことは大事だが、怒りをもって相手を攻撃することは、良好な関係性をつくることにつながらないと本木氏は言う。何が本当に必要なのかを、見失ってしまうかもしれないからだ。企業や人間同士の関係性をつくるために、コーチングを専門とする森川氏に間に入ってもらい、最後にようやくチームに笑顔が生まれたそうだ。

東氏は、「SDGsを企業でやりたくない人もいる。」と、自身の過去の対立経験を共有。そのうえで、「あの人は何でも反対する」と相手の背景を考えずに言うことの危険性を指摘した。反対する人には、反対する人の理由があるのだと。サステナビリティは「Decision Challenge(意思決定の挑戦)」なのだと語り、同じチーム内で意見の食い違う人々を、対話を通して理解すること重要性を述べる。

セッションのようす

前半のセッションを一通り終えた会場からは、「では、どうやってその対話をしたらいいのだろう?」という声が出た。

実践:システムコーチングによる対話体験

後半は、システムコーチング(ORSC®)をつかった対話のワークショップが行われた。システムコーチングとは、「理論教育、エクササイズ、対話」を通して「別々の個性や強みを持った個々人」が、「一度にチームとして成長」していく為の支援をすること。(引用:CRR Japan – システム・コーチング®とはパーソナルコーチングやチームビルディングとの違いは、「当事者全体」の「関係性そのもの」に直接働きかけることだという。

ワークショップでは、参加者全員が一つの大きな会社にいると仮定し、異なる意見を持つ「リーパー」「ブリッジビルダー」「トラディショナルホルダー」の3つのグループに自主的に分かれた。

  • リーパー(Leaper)
    取り組みの先駆者。アーリーアダプター。0から1を生み出すことを楽しむ人。
  • ブリッジビルダー(Bridge Builder)
    さまざまな意見の架け橋となる人。バランサー。物事をよく観察してから動く。システム化が得意。
  • トラディショナルホルダー(Traditional Holder)
    保守的。守ってきた伝統、価値観、文化を存続することに価値を見出す。会社の手綱を握る。

ワークショップのようす

自分はどこのグループに分類されるような行動をしがちなのか、考えた人もいるのではないだろうか。

森川氏と東氏が中心となって、互いのグループについて「どんな国?」「何を大事にしている?」「他のグループには、どんなことをわかってほしい?」「どんなジレンマがある?」「どんなサポートが必要だと思う?」などの質問を投げかける。参加者は、自分を振り返り、他のグループの考えを知りつつ、相互理解につとめた。

他のグループへのメッセージとして、リーパーからは「人生は一度きりなんだよ」、ブリッジビルダーからは「組織のことを常に考えて行動している。リーパーもトラディショナルホルダーもお互いの意見をちゃんと聞いてほしい」、トラディショナルホルダーは「今までやってきたことをいきなりくつがえすのではなく、認めてほしい」などの声があがる。会場では、一つの「会社」のなかの分断をなくし、歩み寄ろうとする雰囲気があった。

ワークショップのようす

組織が健全で持続可能であるためには、この三つのグループすべてが必要なんだ、と森川氏は語る。

SDGsの目標17である「実施手段の強化と持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップの活性化」は、他者への理解なしでは達成できない。自分と異なる意見をまずはしっかりと聞き、互いに認め合える関係性を築くことの大切さを、改めて考えさせられるセッションであった。

【関連ページ】持続可能な開発目標(SDGs)とは・意味