農家と小売を直接つなぐ。農業サプライチェーン透明化を目指すインドネシアのソーシャルスタートアップ2社の挑戦

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インドネシアは、約2億6000万人もの人口を抱える巨大国家である。この国では今年、5年に一度の大統領選挙を控えている。主な争点は複数あるが、ここでは「農業問題」を挙げよう。

インドネシアは地域にもよるが、熱帯気候と豊富な降水量の恩恵に恵まれ年3回の稲作が可能だ。しかし現実問題、この国の農家は決して豊かとは言えない。その要因のひとつが、多過ぎる仲買人である。小売店に直接アクセスする方法を知らない農村部の一次生産者は、農産物の出荷を仲買人に依頼するしかない。だが、その仲買人はさらなる仲買人に農産物を回す。すると結果的に一次生産者への収益が小さくなり、市場価格が高くなる。

また、仲買人同士による数次取引は、生産地の明示を曖昧にしてしまう。どこで収穫されたのか分からない、得体の知れない農産物が市場に蔓延するのだ。しかしそれは、一次生産者と小売店との間にパイプができれば解決する問題でもある。

インドネシアのスタートアップ『Limakilo』は、まさにそのパイプとなる卸売プラットフォームを提供する。この国の都市部には無数の屋台や零細商店があり、市民は日常的にこうした店舗を利用する。日本でもよく知られたインドネシア料理、ナシゴレンは、現地では「屋台のメニュー」というイメージである。そのナシゴレンに使う野菜や香辛料を、一次生産者から直接仕入れよう。それがLimakiloのコンセプトだ。

インドネシアの農家

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今年2月、同じくインドネシアのスタートアップで、昨年から急拡大を遂げる『Warung Pintar』が、Limakiloの買収を決めた。Warung Pintarは、インドネシアの「ワルン」という形態の小売店をユニット化し、組み立て式にした店舗だ。バイクタクシーの運転手の待機所としても機能しており、仕事に必要となる無料Wi-Fiや充電スタンドを完備している。

2018年2月頃のWarung Pintarは、たったの数店舗に過ぎなかったが、それから1年経過した今では実に1,200店舗を超えるまでになった。そのWarung Pintarが、Limakiloの買収に踏み切った意味は重大だ。これは見方を変えれば、Warung PintarがLimakiloのフェアトレードネットワークに加わるということでもある。今回の買収により、Limakiloと提携する店舗数は2倍以上に増加した。

今後、Warung Pintarで提供される飲食物の材料は、フェアトレード製品になる可能性もある。先述の通り、仲買人を省けば農家への収益が増えると同時に、仕入れ価格が安くなる。

インドネシアは、長年横たわってきた問題を最先端のITシステムで乗り越えようという気概に満ちている。選挙を控える現職のジョコ・ウィドド大統領は、「スタートアップ育成のための支援を行う」とすでに公約している。優れたITスキルを有するスタートアップの支援をすれば、社会システムのオンライン化が進み生産や流通の効率も飛躍的に向上するからだ。

Warung PintarとLimakiloは、ジョコ大統領が思い描くビジョンを一足早く実現させているようだ。

【参照サイト】Warung Pintar
【参照サイト】Limakilo
【参照サイト】Warung Pintar acquires farmer empowerment platform Limakilo