自動車の普及が進み、世界各国の都市では、交通渋滞と排気ガス等による大気汚染が問題視されている。2018年には、環境に悪影響を及ぼすとして、デンマークなど欧州各国でディーゼル車の販売に規制がかけられ始めた。そんな中、環境にやさしい移動手段として注目を集めているのがシェアサイクルだ。各国での事例にならい、ここにきて日本でも導入が進んでいる。
日本でシェアサイクルサービスを運営する株式会社ドコモ・バイクシェアが、走った跡が広告になるというユニークな自転車「STAMP BIKE(スタンプバイク)」を開発した。2019年3月19日、渋谷ストリームで1日限定の実施を行ったという。
スタンプバイクに使われているのは、3Dプリンターで製作した特注のエアレスタイヤ。車体につけられたポンプから、タイヤに自動で水が噴射され、濡れたタイヤの走った跡が広告になるという仕組みだ。
スタンプバイクが通り過ぎた後には、チンパンジーやパンダ、シロクマなど地球温暖化の影響を受けている動物たちのイラストと「しぜんをのこそう」というメッセージが転写される。タイヤの通った跡が地面に「残る」ように、動物たちを未来に「残していきたい」という思いが込められているのだという。
紙もインクも電気も不要。水が蒸発するまでの間だけ、道路に映し出される作品である。きれいに跡を転写する理想のタイヤを完成させるまでには、半年もの時間がかかったそうだ。
自転車の利用は、環境面だけでなく、交通渋滞の影響を受けにくいという利点を持つ。シェアサイクルの普及は、東京での開催を控えるオリンピックを、持続可能で快適なものにするための有効な手段にもなりうるのではないだろうか。
2020年、世界中からやってきた人々が行きかう東京の路上には、タイヤが描くやさしいメッセ―ジが溢れているかもしれない。
【参照サイト】-環境負荷の低減を啓発- “水で描く新しい広告媒体”が誕生走った跡が広告になる自転車「STAMP BIKE」