【デンマーク特集#6】一番良いのは、買わないこと。サステナブルショップEco Egoが考える「もう一歩先の」消費

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環境問題への意識が高まるコペンハーゲンでは、人々の間でサステナブル消費が浸透してきている。そんなエコ感度の高い市民たちから支持を集めるのが、コペンハーゲン市の片隅にある小さなショップだ。

Eco Egoの外観

Eco Egoの外観

うすいグリーンがさわやかな外壁、窓からのぞく木製シェルフや生成りの布製品……ナチュラルで心地よい雰囲気をかもしだすこの店こそ、サステナブル&エシカル雑貨の販売を行う人気ショップEco Ego(エコエゴ)である。

Eco Egoが目指すのは、水や空気がきれいで緑にあふれた地球をつくること。そして、人々が互いを尊重し、自然や動物にリスペクトを持ちながら生きる世界にすることだ。「世界をもう少しグリーンにする買い物」を支援するというコンセプトのもとに商品を選定しており、プラスチックフリーのドリンクボトルやストロー、何度でも繰り返し使えるミツロウラップ、捨てられた漁業網をリサイクルして作ったサングラスなど、環境にも人にもやさしいエシカルプロダクトだけを販売している。

店で扱う商品をセレクトしているのが、オーナーのブライアンさんだ。彼は11年前に店をオープンして以来、世界中から仕入れた商品を販売し、市民のエシカル/サステナブル消費を支えてきた。そんなブライアンさんが考える「サステナブルな暮らし方」とは、そして「私たちが消費者としてできること」とは?

人々の意識は、すこしずつ変化しているけれど……

Q:店をオープンしたきっかけは?

「自分が使いたい」と思えるものが買えなかったことですね。Eco Egoのオープン以前には、環境や社会にやさしい商品なんてあまり売られていなかった。食器を洗うスポンジにはプラスチック製のものしかない、というように生活用品はほとんど使い捨て用でしたし、オフィス用品にも再生紙でできたもなんてありませんでした。食品は1987年から政府主導の認証制度が存在していることもあってオーガニックのものを手に入れられたのですが、オーガニック素材の服はなかなか手に入りませんでしたね。

僕がこの状況を変えよう、と思ったのが店を始めたきっかけです。2008年のことでした。

Eco Egoオーナー、ブライアンさん

Eco Egoオーナー、ブライアンさん

Q:11年前と比べて、変化を感じるか?

そうですね。コペンハーゲンでは、ふつうのスーパーマーケットでもサステナブルな製品が買えるようになってきました。それに、僕が自分の店で販売したいと思えるような「環境にも社会にも良い商品」の数も増えているな、と思います。その大きな要因の一つが、ソーシャルメディアの普及ではないでしょうか。

SNSでは自分たちの国の環境に何が起こっているかをビジュアルイメージで見ることができます。それだけではなく、自分の行動によって引き起こされた、はるか遠くの地での出来事を知ることもできます。プラスチックごみでケガをした海の生き物の映像、見たことあるでしょう?今起きている問題の重大さに気づきはじめているからこそ、人々の間で少しずつサステナブルな消費スタイルが広まってきたのではないでしょうか。

ですが、残念ながら11年前と全く変わっていないことも。それは、最も厳しい基準で商品を選んでいる店が昔も今も、僕の店ということですね。

一番良いのは、買わないこと

Q:店に置く商品はどう選んでいるのか?

僕の仕事は、ベストを追求すること。ベターからベストにするために、さらなる「もう一歩」をすすめることです。

うちで扱う月経カップを例にとってみましょう。月経カップとは繰り返し使えるため環境にも良く、経済的にもやさしいと人気の生理用品です。最近は、どのメーカーのものもだいぶ品質が安定してきています。ですが、だからといって「どこの製品を扱っても同じ」なんてことはありません。ここから、「もう一歩踏み込む」ことができるんです。

店で採用した「RUBYCUP」は「Buy one Give one」という活動を行っています。これは、消費者がカップを1つ買うとケニアの女性にもカップが1つ寄付されるというもの。ケニアでは、生理用品を買うことができず生理の間は学校に行けない女の子も多いんです。彼女たちがちゃんと毎日学校に通えるようにするために活動を行っているのがRUBYCUPなんですね。

このように、「すでに何かの問題を解決するソリューションでありながら、他の問題にもアプローチする」「環境に配慮しているだけでなく、社会的にも良いことをしている」など……いつも「さらにもう一歩」進んだ商品を追求しています。製品の質はどこも似たようなものだし環境にやさしいのは一緒なのだから、とりあえず仕入れやすいメーカーのものを選べば良い……世の中にはそういう考え方もあるでしょう。ですが僕は同じ買い物をするなら、環境や社会に「より良い」影響を与えたいと思っています。

それから、仕入れる場所にも気を付けていますね。商品探しを始めるのは店の周りからです。コペンハーゲン市内に納得するものがなければデンマーク国内で、それでもなければ近場の国で……というように徐々に範囲を広げて探しています。せっかく良い商品があったとしても輸送する間に大量のCO2を排出するようでは、意味がありませんからね。

店で販売されているガラス製ストロー

店で販売されているガラス製ストロー。ほかに竹製のストローも販売されている。

サステナブルな暮らしをするなら、本当は買わないのが一番いいんですよね。誰かが貸してくれるならそれで済ますのがいい。買わなくてはいけないなら、まずは中古品がないか探す。そこまでした上でどうしても新品を買う必要があるのなら、環境にも社会にもやさしいエシカルな商品を選ぶ。……モノを手に入れるときには、このプロセスで考えていかなければいけません。それが消費者としての責任だと思います。

人々がサステナブルに暮らせるよう手伝うのがこの店の役割ですから、うちに来てくれたお客さんにもまずは「必要がないなら買わない」ことを薦めています。どうしても買わなければいけないという人に、環境にも社会にもGOODな買い物をしてもらえるよう、商品の仕入れにはかなりこだわっていますね。環境にも人にやさしい製品を選定するにあたっては、「オーガニックのものか」「認証を受けているか/文書で証明されているか」「アップサイクル/リサイクルされた素材を使っているか」「プラスチックは使われていないか」「包装は最小限か」「製造過程において毒性のある化学薬品は使われていないか」「フェアトレードか」など様々な項目について包括的にチェックを行っています。

使えなくなった自転車のタイヤをアップサイクルして作られたベルト

使えなくなった自転車のタイヤをアップサイクルして作られたベルト。

製品自体ももちろんですが、製品を作っている「会社自体」が信頼に値するかどうか見極めるのも大切にしています。

例えば、電化製品の場合は膨大な数のパーツからできていますよね。すべてのパーツについて一つ一つ「環境や社会にやさしいものなのか」「倫理的に調達されているか」を確かめようとしてもなかなか難しい。だからこそ、会社自体のプロファイルを見極める必要があるんです。自社工場で生産しているのか、下請けに任せているのか?工場にきちんとした運営ガイドラインがあるか、その内容はどうか?本部の人間が実際に工場を訪ねて適切な指導を行っているか?労働環境は安全か、給与はきちんと支払われているか?……会社自体が「社会や環境をよくしよう」という本気の想いや責任感を持ち、細部にまで気を配っているかを知りたいので、とにかく質問して、質問して、質問しまくります。

質とは、社会や地球への責任

Q:商品を選ぶとき、質が良くてもエシカルでない/エシカルなものでも質が悪いというジレンマはないのか?

まず、「質」とは何かということについて僕の考えを説明させてください。消費者は、商品のデザインや機能・耐久性のことを「質の良さ」だと考えてしまいがちです。しかし、商品の質が良いというためには、大前提として地球や人に良いモノをつくるという「作り手の務め」が果たされている必要があります。どんなにデザインが美しく優れた機能をもっていてもその責任が果たされていないのなら、質が高いとは言えないということです。

商品の機能、デザインの良さ、社会責任を果たしているかどうか、これらすべてがそろって初めて「質が良い」と言える、僕はそう考えています。ですから、3つのうちどれかを犠牲にした商品は店に並べません。商品の選定に妥協はなしですね。

オーガニックコットンの靴下

オーガニックコットンの靴下

エシカルな製品も、価格競争の環境に置かれるべきだと思います。皆が手に入るようになることが大切ですから。

ですが、安すぎるものには理由があります。例えば、安価なTシャツ。どうしてその値段で提供できるのでしょう?製造過程で汚染された水に適切な処理を加えるというコストを省いて、そのまま海や川に流しているからかもしれません。あるいは、従業員が危険な環境で長時間働かされていたり、賃金を払ってもらえずにいたりというように「誰か」の犠牲で成り立っている値段なのかもしれませんね。「なぜその価格なのか」を私たちはしっかりと確かめなければいけないのです。

本当のフェアプライシングは「環境にいいものが手頃な値段で手に入り、環境負担の大きいものは高額で扱われる」ということだと思います。そういう状況をつくるためにも、私たち消費者は環境にやさしいエシカルな製品を選ばないといけないんです。

Q:サステナブルなライフスタイルを実践するうえで大事だと思うことは?

何よりもまず、自分の消費スタイルを批判的な目で見つめ直してみることですね。先ほどお話した僕らの店のポリシーこそが、僕が伝えたいことのすべてです。一番良いのは買わないこと。誰かのものを使わせてもらえるなら、借りること。 どうしても買う必要があるなら、中古品を探すこと。それでも見つからないなら、環境にも社会にも良いものを買うこと。

最近買ったものを振り返ってみてください。それを買う必要は本当にありましたか?それはオーガニック製品ですか?プラスチック袋で過剰に包装されてはいませんでしたか?その商品があなたの手に渡るまでに、地球や遠い国の誰かを犠牲にしていませんか?

ちいさな買い物ひとつでも、積み重なれば大きな違いになるんです。だから、商品をカゴに入れる前に、少しだけ考える時間をとってほしい。それが消費者として、そして地球に生きる人間としての責任ですから。

Eco Egoロゴと店内

Eco Egoロゴと店内

編集後記

店を経営する側でありながら「一番良いのは買わないこと」だと言い切ってしまえるのは、ブライアンさんが「本気で」環境や社会を良くしたいと思っているからなのだろう。彼がどこまでもこだわって選んだ商品たちは、購入者の生活をゆたかにするだけでなく、どこか遠くにいる誰かの人生にまで「ちょっと良い」変化を与える。

買い物はいわば小さな投票だ。私たちは「買わない」という行動を通じて、環境や人を犠牲にしてお金を集める企業のやり方に「NO」を突き付けることもできるし、エシカルな商品を買うことで「よりよい世界」に一票を投じることだってできる。

少しだけ、自分の消費スタイルを見直す時間をとってみてはどうだろう。

【参照サイト】RUBY CUP
【参照サイト】Eco Ego公式サイト