パリ協定や、国連による持続可能な開発目標(SDGs)の採択を受けて、今さまざまな企業がサステナビリティに関する目標を掲げている。しかし、それぞれの企業がどのような基準を満たすことを約束し、実行し、どのようにその効果を測定しているのかを知る人は多くない。
CSRレポート等で進捗を発表している企業もあるが、それは他の企業のものや国際的な目標と比べてどうだろうか。実態は、あまり明確になっていない。そこで、農林業を行う企業を対象に「目標→行動→進捗」という統一した枠組みをつくり、よりわかりやすく透明性の高い報告ができるようにする新たな取り組みがアメリカを起点に行われている。
「アカウンタビリティ・フレームワーク」と呼ばれるこのイニシアチブは、企業が設定した目標への進捗管理をしやすくし、その達成度を外からも見える化するものだ。Rainforest Allianceや、Nature Conservancy、Verité、WWF(世界自然保護基金)といった多数のパートナー団体が設計し、企業の環境や倫理基準の設定プロセスから、“あいまいさ”をなくすことを目指す。隠れた森林伐採や生態系の破壊、人権の侵害などを防ぐ意図もあるという。
米コーネル大学の教授で、Rainforest Allianceのプログラムディレクターであるジェフ・マイルダー氏は、このフレームワークの利点について次のように説明する。「マクドナルド社やバンジ社などの大企業が、“サプライチェーンから森林破壊を排除する”という同じ目標を設定しているが、2社の森林破壊の定義は同じなのか。達成状況の測り方や、進捗報告の方法が異なっていたらどうするのか。アカウンタビリティ・フレームワークは、こういったさまざまな状況において、パリ協定やSDGsをもとにグローバルな測定基準や要件を適用できるようにする」
このフレームワークには他にも、サプライチェーン監視の統一された基準、先住民コミュニティの権利の尊重、経済における倫理の基準、進捗の定義と測定の標準化など、あらゆることが含まれる。企業にとっては、統一された基準を満たすために自社で掲げた約束を変えていく必要があるのかどうか、実施を早めたり、目標の規模を拡大したりするべきかどうかなどの判断がしやすくなる。
マイルダー氏は、この枠組みの目標は、参加する団体を互いに競争させることではなく、企業や行政、非営利団体が、環境保護や倫理を推進するために必要とされる基準を広く理解し、互いに学び合うことだと言う。今後は各企業が積極的にこのフレームワークを活用し、農林業において大きな進展があることを期待したい。
【参照サイト】Accountability Framework
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