マイクロチップで服を追跡。ファッション業界の完全なサーキュラーエコノミーを実現する「Circular ID」

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2019年6月、アメリカにてファッション業界を大きく動かす新たなグローバル・イニシアチブ「Connect Fashion」が誕生した。設立の目的は「ファッション業界におけるサーキュラーエコノミーの実現を促進させること」である。米のファッションテクノロジー企業・EONを中心に立ち上げられたConnect Fashionには、現在すでにH&Mグループ、ターゲット、PVHコープ、マイクロソフト、クローズド・ループ・パートナーズなど多数の企業や団体が参加を表明している。彼らは、業界のサーキュラリティを高める手段として「CircularID」と呼ばれる埋め込みタグを利用したデジタルシステムの導入を提案している。

CircularIDイメージ

Image via EON

CircularIDは、衣服そのものにマイクロチップを織り込み、服のライフサイクルのうちどの段階でも商品情報を追跡確認できるようにするデジタルシステムである。CircularIDをスキャナーで読み込むと、ブランド・カラー・価格・原料・生産国などといった「基本情報(服の出生証明書)」と、服がどのように販売・購入・リセールされてきたかという「インタラクションログ(服のパスポート)」を閲覧することができる。CircularIDの導入によって、ブランドやアイテムを横断して個々の商品を識別し、販売から時間が経っていても容易に商品情報を確認できるようになるのだ。

EONのCEO兼Connect Fashion創業者であるナターシャ・フランクは、「商業的な情報がサステナビリティを促進するなんて想像できないかもしれませんが、実はサーキュラーエコノミーを形づくるうえではそういった情報がとても大切なのです」と述べる。それはなぜなのだろうか?

大量生産・大量消費によりムダになった洋服

Image via shutterstock

これまでのような「生産、消費、廃棄」という一方通行のシステムから「一つのモノを最大限活かす」循環型システムに転換していくためには、リセール、シェアリング、リサイクルといったサーキュラービジネスモデルを積極的に活用していかねばならない。そして、そういったビジネスモデルにおいて鍵となるのが「商品情報」なのだ。

例えば、ある洋服を古着店で販売する際。まずは商品を鑑定し本物であることを確かめる。その後、正規の販売価格や参考にしつつ、商品の使用度合などを加味して適正な値付けが行われ、やっと商品が店頭に並ぶこととなる。商品を見極めるにしても値段を決めるにしても、商品の発売時期や正規価格などといった「情報」が必要なのだ。

あるいは、洋服をリサイクルする際も「情報」が不可欠である。衣料品を生地へと作り替えるためには、素材ごとに分ける必要がある。衣料品はオーガニック繊維や合成繊維を織り交ぜて作られていることが多いため、原料やその組成が正確に分からないとリサイクルするのが難しいのだ。

服の商品タグ

Image via shutterstock

こうした商品情報を管理するものとして、これまでにも商品タグが存在していたが、その多くは販売時に切られてしまっていた。縫い付け式タグでも、着用するごとに色褪せて文字が読めなくなるなどの問題があり、一度消費者の手に渡ってしまえばタグを利用した商品情報の追跡は難しい状況であった。

一方、CircularIDの場合は、洋服の生地自体にマイクロチップを織り込むので、服そのものがあれば個々の商品を識別・管理できるようになる。いちいち過去のブランドラインナップを遡ったりデータを照合したりする手間を省くことができ、よりスムーズなリセールやリサイクルが可能になるのだ。

CircularIDの導入は、企業やブランドが「長期的なライフサイクルを考えた商品企画」をするように変わっていくきっかけとなるだろう。大量生産・大量消費という業界の常識にテクノロジーの力で挑むConnect FashionとCircularIDプロジェクト──今後の動向に注目である。

【参照サイト】Connect Fashion Global Initiative
【参照サイト】EON