再び「市民」を街の主人公に。バルセロナの新しい街づくり「Superblock Project」

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バルセロナというと、青い空に美しいビーチ、そして美しい街並みを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。

しかし実際に生活をしてみると、碁盤の目に整備された街の隅々にまで自動車が走っており、交通量は多く、自動車のスピードも速い。筆者の家はアパートの5階だが、市の中心部に位置するため窓を開けると騒音や排気ガスが気になってしまう。スペインの他の都市から来た友人の中には「バルセロナの空気が健康に影響するのではないかと心配だ」と言う人もいる。

スペイン第二の都市であるバルセロナでは、約100平方kmの土地に160万人以上の人々が住んでいる。市の発表によると、バルセロナ市内の大気汚染の水準はEUやWHOの基準値を超えているそうだ。人口の98%がWHO基準値以上のPM10に、68%がWHO基準値以上の二酸化窒素に晒されているという。主な原因として、自動車の排気ガスや、タイヤとアスファルトの摩擦、工事現場で発生する塵や埃などが挙げられている。

このような状況の中、2016年にバルセロナ市は市民中心型の街づくりのため「スーパーブロック・プロジェクト(Superblock Project)」を立ち上げた。碁盤の目状の区間の一部を歩行者と自転車専用のスーパーブロック(特別区間)にすることで、市民の安全と健康を守るプロジェクトだ。計画では、バルセロナ市を構成する10地域中9地域に503ものスーパーブロックが設けられる予定である。現時点で6地域に設置されている。

スーパーブロックプロジェクト

スーパーブロックプロジェクト

スーパーブロックの設置によって、市民の安全性を高めると同時に、都市生活の中でもウォーキングやジョギング、サイクリングがしやすい環境になることが期待されている。また街路樹を増やし、ヒートアイランド現象といった気候変動の影響を緩和することもスコープに含まれている。実際にスーパーブロック化された通りを歩いてみると、街路樹が植えられた通りには数多くのベンチが並べられ、市民が談笑したり休憩したりしている。

自動車の走らない道路では、ベビーカーや子ども連れの方もどことなく安心して歩いているように見える。信号を気にする必要もないため、ショッピングカートを引く高齢者の方も歩きやすそうだ。また、スペインでは外食する際、レストランの道路傍に並べられたテラス席が人気だが、車道と近い場合はどうしても食事中の排気ガスや埃が気になってしまう。しかし、スーパーブロックに設置されたテラス席ではそのような心配はない。

スーパーブロックプロジェクト

スーパーブロックプロジェクト

この度発表された研究結果では、プロジェクトの効果として、排気ガス削減などの環境改善により年間死亡者数が約700人減少、平均寿命が約200日増加、それにより年間17億ユーロ(約2,000億円)規模の経済影響が見込まれている。

歴史を遡ると、バルセロナの街開発は市民の立場に立ったものだった。バルセロナは13〜15世紀に生まれた「旧市街」と、19世紀に生まれた「新市街」と大きく二つに分けられる。特に新市街は、当時の爆発的な人口増加とそれに伴う住宅不足と衛生環境の悪化から、市民の健康と生活環境の改善を考えて開発されたという。十分な日照性、通気性と緑のある生活空間を市民が確保できるよう、道幅の広さと建物の高さを考慮し碁盤の目状に市街が拡張された。

しかし20世紀の自動車の普及により、街の基本的な構造はそのまま、街の主体はやがて自動車となりアスファルトが増えた。乳幼児を含めた交通事故の増加、排気ガスや騒音による環境汚染と健康被害などが問題となった。

再び市民を街の主人公とすべく、バルセロナ市が大きく舵を切り出したのだ。21世紀における市民の安全と健康を考えた街づくり。再び実現されるのが待ち遠しい。

【参照サイト】Changing the urban design of cities for health: The superblock model
【参照サイト】Qualitat de l’aire (Quality of Air)
【参照サイト】SUPERBLOCKS
【参照サイト】Barcelona’s remarkable history of rebirth and transformation