スウェーデンのハイパーローカルな街づくり。住民のアイデアを形にした「1分間の都市」

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新型コロナウイルスによって生活様式が変化するなかで、自宅や近所での健やかな過ごし方を模索した人も多いだろう。近場で過ごす傾向が続くなかで注目されているのが、パリが発表した都市計画である「自転車で15分の街」や、バルセロナが設ける歩行者と自転車専用の特別区間「スーパーブロック」などだ。もともとは、どちらも大気汚染や気候変動への対策として提案されており、住民が車を使わずに街の機能にアクセスできたり、近場で安全かつ健康的に過ごしたりすることを目指している。

そして、これらの取り組みの後に続くかのように登場したのが、スウェーデンの首都ストックホルムで始まった「Street Moves」という街づくりプロジェクトだ。同プロジェクトは「道の一部区間」を作り替えるのが特徴で、パリやバルセロナの構想よりも一段小さいスケールで取り組みを進めている。

Street Movesではまず、自宅近くの道をどのようにデザインしたいか、子どもも含む地域住民にワークショップでアイデアを出し合ってもらう。そして実際に、木でできた移動可能な模型にアイデアを反映させ、それを道に設置する。非常に小さなスケールでの取り組みであることから、同プロジェクトを率いるスウェーデン・イノベーション・システム庁(VINNOVA)は「1分間の都市」というコンセプトを掲げている。

1分間の街

実際に住民が考案して作られたアイデア。Image via ArkDes

「1分間の都市」といっても、もちろんそこで生活に必要な施設が揃うわけではない。しかし街はたくさんの道がつながってできているのだから、まず私たちの身近なところから構想を練ることは、市民が主役となる街づくりの推進に寄与するのではないだろうか。

Street Movesの木で作られたプラットフォームには子どもの遊び場、屋外ジム、コミュニティガーデン、地域の交流の場など、アイデア次第で様々な場を実際につくることができる。住民は手探り状態で色々試すなかで、自分たちの街に欲しいものを発見していくのだ。

1分間の街

実際に住民が考案して作られたアイデア。Image via ArkDes

2020年秋、ストックホルムの道に実験的に導入された「Street Moves」には、キックボードを停めるスペース、テーブル、ベンチなどが設置された。そのときは大勢の人が集まり、このプロジェクトのために駐車スペースがなくなったのにも関わらず、大多数の人が好意的な反応を示したという。2021年にはヨーテボリやマルメなど、他の街でもStreet Movesの取り組みを広げていく予定だ。

現時点では実験的に導入されているStreet Movesだが、スウェーデンは今後10年間で国内のすべての道のあり様を再考し作り替えるという、野心的な目標を掲げている。2030年までに、スウェーデンのすべての道を健康的で持続可能で活気に満ちたものにすることが、同プロジェクトの目的だ。

環境問題が懸念されるなか、従来の車中心の街から人中心のウォーカブルシティに再編する取り組みが注目される昨今。人や環境に優しい社会への転換を目指すには、電気自動車を使うといった技術的なアプローチだけでなく、市民が主体となって活動するなど社会的な要素も欠かせないだろう。10年後、20年後の街の姿を考えながら、今日も外を歩いてみたい。

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【参照サイト】 Make Way for the ‘One-Minute City’ A Tiny Twist on Street Design: The One-Minute City – Bloomberg

Edited by Erika Tomiyama

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