建設業界が排出するCO2の量は、世界全体のCO2排出量の約40%。その多くはコンクリート製造に起因している。多くの国では1960年代からコンクリート建造物が急増したが、今では環境と技術を考慮した建造物の維持保全が急務となっている。
そこでスイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究チームがこのほど、建造物を強化する新たな「超高性能繊維補強コンクリート(以下、UHPFRC)」を開発した。既存の建築や新たな建築に使用することで建物の寿命延長に貢献できるこのUHPFRCは、他の繊維補強コンクリートよりも10%軽く、製造工程では従来の繊維補強コンクリートの30%~40%のCO2のみを排出する。
新たなコンクリートの持続可能性の秘訣は何か。研究チームは、現在広く使われているコンクリートの特性を保持しながら、スチール繊維を含まない材料を開発することを目指した。そしてスチール繊維の代わりにセメントによく付着する非常に硬いポリエチレン系合成繊維を使用すると共に、コンクリートの一般的な原料であるセメントの半分を、世界中で広く入手可能な材料である石灰石に置き換えたのだ。
UHPFRCはスイスの厳格な建築基準を満たしているため、2020年に橋の補強に初めて使用される予定。同国で100以上の橋と建物の構造補強を監督してきた当研究室の ブリューヴァイラー教授は、「UHPFRCは、橋や歴史的建造物などの既存の構造物を壊して再建設するよりも、経済的で環境にずっとやさしい。」と語っている。
CO2をできるだけ排出しないようにつくられ、建造物の寿命を延ばすUHPFRC。持続可能な建築の、今後の展開が期待される。