私たちが1回のトイレ使用で必要とする水の量は、通常6~8リットル。世界中で使用されるトイレの水は莫大な量になる。水不足の問題を抱える地域が多いなか、米ペンシルベニア州立大学がトイレの水消費量を半分に削減する新たなコーティングスプレーを開発した。
「LESSコーティング」と呼ばれるこの技術は、2段階のコーティングをセラミック製便器にスプレーで吹きかけて使用する。
最初に塗布するスプレーは水をはじく滑らかなベースをつくりだし、乾燥すると、人間の毛の直径より約100万倍細い、小さな毛のような分子を成長させる。そして2番目のスプレーでナノスケールの「毛」の周りに潤滑剤となる薄い層を注入すると、滑らかな表面が形成される。
研究チームが実験室のトイレにこの新コーティングを施して、その上から合成糞便を捨てたところ、合成糞便は完全に滑り落ち、トイレには何も付着しなかったという。2段階のコーティングにかかる時間は5分未満で、当研究チームはこれをトイレに施すと約500回の洗浄に耐えると予測している。
さらに実験では、感染症や不快な臭いをもたらす細菌も効果的にはじかれた。汚れたトイレは私たちの健康にも害を及ぼす可能性があるため、水の使用削減だけでなく衛生面でも画期的な技術だ。コーティング自体は世界中にある水なしトイレでも使え、開発が進めば発展途上国の衛生向上に役立つとみられる。
当研究チームは、米国および世界中の節水や水不足などの問題に対処するスタートアップ「spotLESS Materials」を立ち上げ、アメリカの国立科学財団やエネルギー省などのサポートを受けて、すでにLESSコーティングの販売を開始している。
トイレの水消費量を半分に削減し、清潔に保つことで、世界の水資源の維持と衛生向上に貢献するペンシルベニア州立大学の研究。今後が期待される。
【参照サイト】New, slippery toilet coating provides cleaner flushing, saves water
(※画像:ペンシルベニア州立大学より引用)