コロナ禍の孤独を街の一角で解消?ポーランドに誕生した「おしゃべり歓迎ベンチ」

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コロナ禍では3密を避けてソーシャルディスタンス(社会的距離)を維持することが、感染拡大を防ぐために重要だ。その結果、インターネットを使った遠隔でのコミュニケーションが格段に普及した。しかし、誰でもITを使いこなせるわけではなく、社会から隔絶されて心を病む人が増えている。

そこで、疎遠になってしまった人と人とのつながりを取り戻すために、座った人同士の会話を促進する「Happy to Chat bench(おしゃべり歓迎ベンチ)」がポーランド第二の都市クラクフに登場した。

この一風変わったデザインのベンチには「通行人が座って見知らぬ人と会話すること」を促す案内文がある。その目的は、もちろん孤独への対策で、市民の共同体としての意識を再建することだ。

実はこの「Happy to Chat bench(幸せおしゃべりベンチ)」には、前例がある。英国カーディフの元大学講師アリソン・オーウェン=ジョーンズ氏がある日、公園で犬の散歩をしていると、一人ぼっちでベンチに座っている男性がいた。犬が駆け寄ると、男性は弾けるような笑顔を見せたという。この体験をキッカケに、ベンチに案内を設置したことが始まりだ。

オーウェン=ジョーンズ氏の支援のもと、ポーランドの起業家リチャード・ルーカス氏と近郊のマリア・ゴルチカ氏が取り組みを始めた。また、Open Coffee Youthの創設者マグダレナ・ブリスコス氏や家具会社Fulcoも参画している。

この「Happy to Chat bench(おしゃべり歓迎ベンチ)」は、現地では「Gaduławka」と呼ばれ、ユダヤ人コミュニティーの祝祭で9月22日にお目見えしたものだが、SNSで話題を呼びアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドにも上陸しているという。

新型コロナが大流行する前から、超高齢化が進行する日本では、誰にも気づかれずに他界する「孤独死」が社会問題になっている。いつも、決まった時間にベンチに座っている老人の姿を、ある時突然目にしなくなったら「何か異変があったのではないか」と地域住民が感づくかもしれない。

「どれだけ勇ましい人でも孤独に苛まれることがある、ゆえに誰しもが率直に打ち明けられる人が必要である。」これは孤独な老漁師の悪戦苦闘を描いた小説『老人と海』でノーベル文学賞を受賞した作家アーネスト・ヘミングウェイの言葉だ。のけ者にされる老いた漁師サンチャゴと、その男を慕う少年マノーリンを至ってシンプルに描いた物語である『老人と海』は多くの人の心を打った。

「Happy to Chat bench(おしゃべり歓迎ベンチ)」も、至ってシンプルな仕組みだが「はっ」とするアイデアで、凝り固まった人々の関係をほぐす存在になっている。

【公式サイト】GADUŁAWKA. Everyone should have someone to talk to honestly, because no matter how brave you are, sometimes you feel very lonely. Ernest Hemingway
【参照サイト】Gaduławka, the first Happy to Chat bench in Poland opens in Krakow
【参照サイト】The ‘Happy to Chat’ benches around Cardiff and the heartwarming story behind them

Edited by Kimika

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