フィンランドでは、人口530万人に対してなんと約200~300万個ものサウナがあるという。日本のお風呂と同様に個人の家やマンションにはもちろん、ホテルやボート、ヘルンシキにある国会議事堂などにも備え付けられているくらい、サウナはフィンランド人の日常にとって必要不可欠なのだ。
そんなサウナ大国フィンランドの主要都市タンペレに、地域住民や旅行者が集うコミュニティスペースのようなサウナ「Tullin Sauna」が生まれた。タンペレはフィンランド国内でも公共サウナの数が多くあり、フィンランドサウナ協会と国際サウナ協会に「サウナ・キャピタル」として宣言された都市でもある。
今回、設計を手がけたのはフィンランドの建築事務所Studio Puisto。同事務所によると、Tullin Saunaは、都市のスペースが限られていた19世紀後半に、人々が公共サウナに集まり、ただサウナを楽しむだけでなくアイデアの交換をしていたことにインスパイアされてできた施設だそう。
そのため施設内には、人々のコミュニケーションを円滑にするカフェやコワーキングスペースなどが備え付けられている。フィンランドでは、リラックスできるサウナで会議や商談を行うことも珍しくないのだとか。
Tullin Saunaには、サウナを知り尽くした地元の職人によってつくられた伝統的な木製のサウナが2つある。煙突がなく、室内が暗い原始的なスモークサウナと、一般的に夏のコテージでよく見られる明るい雰囲気の薪ストーブ式サウナだ。
施設内の素材は、暖かな風合いのフィンランド産の松と、コンクリートを組み合わせており、モダンかつスタイリッシュな空間を作り上げた。 どこか懐かしい雰囲気と、活発な雰囲気が混ざり合った場が、人々の対話を生み出すという。
近所の人や家族と共に裸でリラックスする場所という点に関しては、日本の銭湯文化とフィンランドのサウナ文化は似ている。
しかし、フィンランドには多くの人が体だけでなく心まで解き放ち、気軽に人と交流できる環境がある。だから、サウナは愛され続けているのだろう。サウナは地域のリビングであり、人々にとって拠り所の一つとなっているのだ。新たなコミュニケーションを生み出し、廃れゆく銭湯文化を救う手がかりは、もしかしたらサウナにあるかもしれない。
【参照サイト】Tullin – Studio Puisto
【参照サイト】Sauna capital tampere
【参照サイト】Visit Finland