売れ残ったアパレル製品の廃棄問題は、先進諸国で大きな課題として認識されている。流行の移り変わりが早いことや、再販・転売をためらうブランドなど、消費者に届く前の衣料廃棄や、ファストファッションにより、安いからこそ飽きたら気軽に捨ててしまえる消費者の姿勢も原因の一つだ。日本でも2009年時点で年間108万トンの衣料品が廃棄されている。
この課題の解決に向けた動きは近年活発化している。フランスではすでに未使用の衣料品等の廃棄を禁止する法律の制定が進んでいたり、日本でも余剰在庫を仕入れて販売するビジネスモデルが生まれていたりと、注目を集めている。
そんな中アウトドアウェア製造販売大手のパタゴニアは、壊れたウェアをユーザー自身が修理できるよう、ウェアの修理方法をウェブ上で公開し始めた。同社は以前より、パタゴニア製品を修理するポップアップストアをオープンしたり、日本の直営店でレジ袋を廃止したりと、廃棄物削減を通してサステナブル志向を体現している。ウェアの修理方法をウェブで公開することでより多くの顧客に、製品を修理する選択肢を提供する狙いだ。
語り口がユニークなのもおもしろい。
In general, Patagonia garments do not require ironing. However, if you’re trying to make a good impression on “the parents” and you want to sharpen the crease down the front of your pants after an afternoon of bouldering, you should check the iron symbol on the care label of your garment first to make sure it can be safely ironed.
(一般的に、パタゴニアの製品はアイロンが必要ありません。でももし両親にいい顔がしたいなら、または午後のボルダリングのあとにボトムスの折り目を伸ばしたいなら、アイロンができる製品なのかラベルをチェックしてみてください)
今回オンラインで修理方法を公開する上で、電子機器修理のオンラインコミュニティiFixitと提携している。ユーザーはiFixit上で修理したい製品や修理内容を探してオンライン上で方法を学ぶことができ、またユーザーコミュニティで個別の質問を投稿することもできる。同社がすでに提供している修理サービスや修理専門のポップアップショップの開催、修理のワークショップなど、オフラインの取り組みやイベントは今後も継続する予定だ。買い替えではなく修理によって自社ブランドの製品をより長く使ってもらうことで、顧客に価値を提供し続けたい狙いがある。
アパレル業界は一般的に商品サイクルが高速なため、需要と供給のミスマッチやそれに伴う製品の廃棄が起きやすいとされている。それに対してパタゴニアは、創業当初の価値観である自然保護を製品に反映し、ユーザーに伝え続けていることが特徴といえる。製品をより長く使ってもらうことで自社の価値観に共感する顧客とのつながりを強化するビジネスモデルを、パタゴニアはこれからも体現していくだろう。
【参照サイト】パタゴニア WORN WEAR
【参照サイト】iFixit/Patagonia(英語)