政府は給与補償、労働者は有休5日間返上。デンマークでのコロナウイルスによる解雇対策

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新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界中で多数の感染者と死者が発生し、国境封鎖政策を行う国も出てきた。一体いつ収束するのか見当のつかない中で、人々の不安も同様に広がっている。世界の株式市場は下落し、その影響は我々にも決して無関係ではない。そう、それは会社からの突然な解雇通告の形で、いきなり我々に降りかかってくるのだ。

こうした労働者の権利への不当な蹂躙を防ぐため、デンマーク政府は、コロナウイルスによる感染拡大で経済的に大きな影響を受ける企業が従業員を解雇せず済むよう、救済措置を設定した。これは、一定の条件下で政府が給与の最大75%(日本円にして最大月37万円。時給労働の非正規雇用者は41万円)を、企業が残りの25%を負担し、条件に当てはまった労働者は年次有給休暇を5日返上するというものだ。そして、措置が間に合わずもうすでに解雇された労働者には、また元の職場に戻れるように便宜を計らう。政府、労働組合、企業の三者合意により、この救済措置が決まった。

danish compensation

Image via Danish Finansministeriet

救済措置は、3月9日から6月9日までの3ヶ月遡及可能だ。デンマーク政府によれば、この政策にはおよそ2.6億クローナ(日本円で約2.7億円)の予算が用意されており、数にして労働者約7万人もの補償が可能である。また、補償する人数に制限はない。これは、現時点で推測される失業者補償に加え、生活費の支払いが滞り自己破産してしまう人々への補償が想定上に多くなることを見越した動きだ。この救済措置を受ける企業は、デンマークビジネス庁のウェブサイト上でオンラインで手続きを行う。補償は3月末から開始される模様だ。

今回で筆者が一番驚き、同時に納得したのは、非正規雇用者の方が手当が手厚くなっている点だ。時給で雇われる非正規雇用者は、正規雇用者に比べてどうしても福祉的・金銭的に不安定な状況におかれやすい。職を失った人々に対しての、企業や民間だけでは不可能なケアを政府が受け持つ点も、健全な国家運営だと言える。

一方で、同様に不安定な個人事業主や日雇い労働者への救済措置は無い。デンマークでは、個人事業者や日雇い労働者が就労人口に占める割合は少ないが、この層には低所得層も含まれており、経済的打撃は時給労働者と同じように受ける。フリーランスでの働き方が尊ばれている昨今だが、今後はこうした不測の事態における個人事業者や日雇い労働者の救済措置も求められるようになってくるだろう。

【参照サイト】Trepartsaftale skal hjælpe lønmodtagere
【参照サイト】Denmark is helping those who can’t work due to coronavirus – why isn’t the UK?(The Guardian)
【参照サイト】Danish deal to compensate workers affected by coronavirus struck between government, bosses and trade unions(Morning Star)
【参照サイト】デンマーク大使館公式Facebook

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