自給自足と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?非常にアナログで、地道な手法の農業を行い、開かれていない社会……そんなイメージを思い浮かべてはいないだろうか?今回紹介するReGen Villagesの提唱する次世代の自給自足は、そうした自給自足のイメージとは全く違うものだ。AIとローカルな食糧生産が組み合わさった新たな暮らしが今、始まろうとしている。
アメリカ、イギリス、スウェーデンに拠点をおくReGen Villagesと、デンマークの建築事務所EFFKET、そしてスウェーデンの建築事務所White Atchitectureがコラボしたこの計画は、昨今の気候変動問題や、食料の安全保障問題に取り組むために立ち上がった。プロジェクトは、未来に向けた新しいライフスタイルの創出と、より持続可能で柔軟な環境問題の解決を実現するために、新技術とローカルの生活との融合を目指している。このコミュニティでは、住居内で発生した有機ゴミが、家畜用飼料、水質管理、再生エネルギーに利用され、最終的に内部の水耕栽培場や農場へ回されることで、新たな食料の創出を促す。すべての作業がコミュニティの内部で循環する、まるで宇宙船のような構造になっている。
それでは、実際彼らはどのようにその循環を実現しているのか。取り組みの例を見てみたい。ReGen Villagesのコミュニティ内部の家は、そのほぼ全てが持続可能な生活を送るために独自でデザインされたものだ。村の中に送電線網を引かなくても良いように、住居のエネルギーは、太陽光パネルで発電した電力で賄われる。自然の熱や空気の流れを利用した冷暖設備により、住居ごとの電気使用量の負担を下げることも可能な設計だ。「shared local eco-system」が施されたこの家族向け住居のすぐ近くには温室が設置されており、住民自ら野菜や果物を育てることができる。
建設予定である村全体の面積は250,000平方メートルで、その4分の1のみが居住部分、残りの4分の3に食糧生産場や農場、発電所、電気自動車充電ステーションを併設した公園や、水耕栽培農園も設置される予定だ。他にも、共有の貯水施設やリサイクルシステム、家畜小屋、食堂、子供の遊び場や学習施設の建設が予定されている。
ReGen Villagesの最も大きな特徴は、その共同体の運営を全体的に管理するVillage OSの存在にある。Village OSは、AI技術とマシーンラーニング技術を組み合わせたものがベースになっている。住民はVillage OSを活用することによって、コミュニティ内で行われる農業や住居用の電力、水の消費量に至るまで、自分たちがどれほどのエネルギーを使用しているのかをモニタリングすることができる。Village OSは自らが集めたデータを分析し、その後の運営を最適化していく機能までも保持している。
ReGen Villagesは、2020年の夏にオランダでこのユートピアのようなコミュニティの建設を予定している。また今後、試験的なプロジェクトをスウェーデン、ドイツ、ノルウェー、デンマーク、中国、UAEなどでも実施予定だ。世界各地のサーキュラーコミュニティによって、地元の手法を活かした新しいライフスタイルが展開されていくのが楽しみだ。
【参照サイト】ReGen Villages
【参照サイト】White Arkitekter
【参照サイト】EFFEKT