日本のらくエコ文化「弁当」を、もっと誇れるものに。コーヒーかすで弁当箱をつくった料理家の想いとは

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小学生の頃、遠足の時に持って行ったおむすびの具、中学校で休み時間の間に先生にばれないようにこっそり早弁した記憶。働き始めてからも、毎日手作りのお弁当を持って出勤する人もいるだろう。お弁当は、不思議と私たちの想い出を呼び起こしてくれる、そんな存在かもしれない。皆さんは「お弁当」と聞くと、どのようなことを想像するだろうか?

今、私たちにとって身近な「弁当箱」で新たな挑戦をしている人がいる。株式会社ホオバルの代表で、料理家、弁当コンサルタントとしてご活躍されている野上優佳子さんだ。「お弁当に悩む人たちの負担を減らしたい」との思いで活動を始められた野上さん。レシピ提供や本の出版、全国で講演をされるほか、現在はコーヒーかすと竹の粉で弁当箱を作るクラウドファンディングに挑戦中(詳細はページ下参照)。「どうして弁当箱だったのか?」「どうしてコーヒーかすなのか?」はたまた、「どうしてクラウンドファンディングを行うのか?」など、湧いてくる疑問を野上さん本人に伺った。

お弁当って実はエコ!でも弁当箱はエコじゃない

Q. お弁当箱を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

「お弁当を作ること、それ自体がエコで楽しいこと。何度も洗って使えてゴミが出ない。私は家でも昼食はしょっちゅうお弁当を食べます。お皿を何枚も用意する必要がないし、朝食の残りが一つの箱の中に入るだけで様になる。余ったおかずを冷蔵庫に入れて保存するときにもお皿にラップをする必要がないし、洗い物も少なくて済む。食べた後の容器が箱一つだと洗う気になるようで、これまで洗い物をしてくれなかった息子も食べたものを洗うようになりました。」

なるほど、お弁当は環境にやさしいだけでなく、家族が家事に協力することにも繋がっているようだ。

しかし、中学生の頃からほぼ毎日お弁当を作り続け、たくさんの弁当箱を持っている野上さんだからこそ、気付いたことがあるそう。

「実は、弁当箱の多くは捨てるときに環境に負荷がかかっていて、サステナブルではありません。プラスチック製の弁当箱には複数の種類のプラスチックが使われていることが多いのですが、プラスチックは混ざるとリサイクルすることが難しい。そのため、多くの弁当箱は再利用されずごみになってしまっています。日本の弁当文化は世界で賞賛されているけれど、容器の素材自体は持続可能とは言えない。世界でも有名な日本の弁当文化がこれではもったいない。」

素材にもデザインにも、使い勝手にもこだわったエコな弁当箱

竹の粉とコーヒーかすからできている弁当箱 BENTO box「COFFEE」

安心して捨てられるゴミにならない弁当箱を作りたいと思い始めて4、5年、野上さんの挑戦を後押しするように偶然出会ったのが台湾のツゥーライ社。すでにコーヒーかすでカップなどの食器を作っていた同社とは東京のギフトショーで出会い、意気投合。出会った次の月には、野上さんは早速台湾に飛んだそう。工場や竹林を見学し、話し合いを重ねた結果、「竹の粉」と「コーヒーかす」を使った弁当箱の開発を進めることになったという。

日本を含め、アジアの多くに生えている竹だが、竹製品を作る際に大量の竹の粉が発生し、廃棄されている。このおがくずを利用することで、捨てる際に自然に還る天然素材の弁当箱ができるだけでなく、これまで廃棄されていたゴミが減るのでまさに一石二鳥。さらに、実際に弁当箱を制作する中で素材のほかに大事にしていることがあるという。

「デザインです。どれだけ環境や社会に良くても、やっぱりデザインが良くなければ買おうと思わない。この弁当箱は日本の伝統工芸品でもある曲げわっぱの形で、色は何を入れても合うようなお洒落な色にして使うのが楽しくなるようなデザインにしました。本当はコーヒーでなくて茶葉や米ぬかでもできたんですが、コーヒーかすから出るこの色合いが良かったこと、台湾の人はコーヒーが大好きでカフェ文化が浸透しているということからもコーヒーかすを選びました。捨てる時は燃えるゴミとして出すことができ、土にも埋められますが、おすすめはプランターとして再利用することです。」

「私たちの行動で社会は変わる」「弁当箱が環境問題に気付くきっかけになれば」

Q. でもどうしてクラウドファンディングに挑戦しようと思ったのでしょうか?

「今お店に並ぶ他の弁当箱の隣にこのBENTO box「COFFEE」を並べても売れないと思いました。もともと環境問題などに関心を持っている方であれば、納得して買うかもしれませんが、知らないとおそらく買わない。ただお店に並べられていても、どうしてこの価格なのかといった最も大切なところが伝えられないと思うんです。私はクラウドファンディングへの挑戦を通し、弁当箱の素材の違いはもちろん、なぜその素材が選ばれたのか、を含めた今日の環境問題、そして弁当箱を選ぶといった私たちの行動の小さな変化で社会が変わるということ伝えれたらいいな、と思っています。」

カギとなるのは「コミュニケーション」


Q. そうはいっても、日本には美味しいお弁当を買うことができるコンビニやお弁当屋さんが充実しており、新型コロナウイルスの影響で増えたテイクアウト店などでもプラスチックの容器を使用していることが多いです。まだまだプラスチックに溢れている世界を変えるにはどうすればいいでしょうか?

「選ぶ側もなんでそれを選ぶのか考えることから始めてみる、またSDGsの推進や消費者のものを買う時の基準も変わりつつある中で、お互いに歩み寄り互いの意見をとりいれて試行錯誤していくことが大事だと思います。例えば、コンビニのお弁当には一つ一つに多くのプラスチックが使われています。それについて疑問を持つ購買者と企業が意見交換や提案をすることができる話し合いの場が生まれるといいのではないでしょうか。生産者と消費者、普段は関わることのない人たち同士のコミュニケーションや人々の間の小さな話し合いが社会を少しずつ変えていくと思います。」

読者に向けて

Q. まだまだ新型コロナウイルスの脅威が薄れない中で、自宅で過ごす人が多いのではないかと思います。読者の皆さんに自宅でお弁当を楽しんでもらうためのアイデアがあれば教えてください。

「一度、今家にある食材だけでお弁当を作ってみてほしいです。新しく材料を買っきてはだめ。作るのではなく、お弁当に詰めるものは、おにぎりだけでも簡単なサンドイッチだけでもなんでもいい。お腹がすかない時はクッキーなどのお菓子を詰めるだけだっていいんです。無理なく家にあるもので作ってみてください。」

編集後記

今回お話を伺った野上さんはとても明るくポジティブなエネルギーに溢れる方で、人生において「挑戦すること」を楽しんでいる方という印象を受けた。この取材を通してお弁当の魅力を存分に伝えていただき、筆者自身もお弁当が持つ可能性に魅了され、これから自宅でも食器を使わない「おうちで弁当生活」を始めてみようと考えている。

野上さんにお弁当の魅力を尋ねた際におっしゃっていた言葉が一つ、耳に残っている。「例えば家族にお弁当を作るとき、みんな食べる場所は違うけど、どこにいても同じものを食べることができる。それってとてもすごいことだと思う。」

たしかに、たとえ場所は違っていても同じ食事をとることができるお弁当は、自然と人と人の心を繋いでいるのかもしれない。買ってきたお弁当も美味しいが、自宅で作ったお手製のお弁当からは、より一層作る人の愛情が感じられる気がする。

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、また第二波や第三波がいつ来るか分からない。引き続き自宅から仕事をする人や、休日もなるべく自宅で過ごすことを心掛ける人もいるだろう。そんな時は余ったおかずやお菓子を弁当箱に詰めて、ピクニック気分でおうち時間を楽しんでみるのもいいかもしれない。人にも環境にも嬉しいお弁当生活、ぜひ取り入れてみてはいかがだろうか?

<BENTO box「COFFEE」クラウドファンディング>
野上さんが現在挑戦中のクラウドファンディングの情報はこちらから。
※支援は2020年6月29日まで。