地球を大事にするために、まずは自分を大事にしよう。野口健×四角大輔トークセッション

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環境問題への取り組みが大切なことは分かっているけど、どうしてもジブンゴトとして捉えることが難しい。環境のために何かを始めたいと思っているけど、最初の一歩が踏み出せない。そんな人にぴったりのイベントが、2月初旬にTOKYO FMホールで開催された。

TOKYO FMとJFN加盟38局がコスモ石油とともに2001年から展開している地球環境保全に対する啓蒙活動「コスモ アースコンシャス アクト」の一環として行われたのは、エベレスト登山家として知られるアルピニストの野口健氏が、地球を舞台に活躍するフロントランナーを迎えてトークを繰り広げる「野口健 トークセッションin東京」だ。

当日は、地球との共生というテーマを掲げ、「ライフスタイルシフト」を提唱するニュージーランド在住の執筆家・四角大輔氏をゲストに迎え、地球の今と未来について熱く語り合われた。

富士山の麓で暮らす野口健氏と、ニュージーランドの森で自給自足の生活を営む四角大輔氏。ともに大自然の中で暮らす二人の会話からは、自分と自然との関係を見つめ直し、自分も地球もハッピーにする生き方を実現するうえでとても参考になる考え方やヒントが数多く飛び出した。今回は、そのなかから特に印象的だった内容をご紹介したい。

話者プロフィール:野口健 氏

1973年8月21日、アメリカ生まれ/血液型A型。高校時代、上級生とのケンカが原因で停学中に読んだ植村直己さんの著書「青春を山にかけて」に触発されて登山を始める。16歳でモンブランに登頂したのを皮切りに96年までに6大陸の最高峰を制覇。そして最後に残ったエベレストを、97年、98年に続く99年、3度目の挑戦で登頂に成功し、当時最年少での世界7大陸最高峰登頂を達成。2000年から4年連続でエベレスト清掃登山を実施。現在は活動の中心を国内に移し、国内の稀少自然保全活動や子供たちへの環境教育といった活動を始めている。

話者プロフィール:四角大輔 氏

地球との共生というテーマを掲げて活動するニュージーランド在住の執筆家/原生林に囲まれた湖の畔でのサステナブルな自給自足の暮らし/環境省アンバサダー/SDGsウィルラボメンター/フライフィッシング冒険家/ベストセラー『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』、最新刊『人生やらなくていいリスト』、『LOVELY GREEN NEW ZEALAND』、『モバイルボヘミアン 旅するように働き、生きるには』、『バックパッキング登山入門』など著書多数/(社)the Organic 副理事や(株)オシロ共同代表など複数の役員を兼任/レコード会社プロデューサーとして10度のミリオンヒットを創出した経験を活かしての、オーガニックやエシカルブランドへのアドバイザリー事業/人生デザイン学オンラインサロン〈LifestyleDesign.Camp〉学長/ライフスタイルシフトメディア〈4dsk.co〉主宰/インスタグラム: 4dsk.co

自分を救ってくれた、自然との出会い。

25歳で当時史上最年少となる世界7大陸最高峰登頂を達成したアルピニストの野口健氏。レコード会社時代に、絢香、Superfly、CHEMISTRY、平井堅など数々のトップミュージシャンをプロデュースし、100万枚以上のミリオンヒットを10回獲得した経験を持つ四角大輔氏。輝かしい経歴を持つ両氏だが、二人には意外な共通点がある。それは、幼少期にいじめられるなど苦労した経験があるという点だ。

日本人の父とエジプト人の母を持つ野口氏は、子供の頃に海外から日本に帰ってきたとき、日本語ができないことや顔立ちを理由にいじめられたという。喧嘩によって高校を停学になり、自宅謹慎になったとき、父親に「旅をして来い」と言われて一人旅をはじめたのが登山と出会ったきっかけだったそうだ。

左:野口健氏、右:四角大輔氏

一方の四角氏も、少年時代はみんなと同じことをすることが苦手で、周りに合わせようとしてもうまくできずにいじめられることがあったという。そんなときに救いとなったのが、父親の影響ではじめた釣りやキャンプ、登山だったそうだ。四角氏にとって自然とは一人になれる場所であり、もともとは人間社会から逃げるために自然に入っていったのがきっかけだったと同氏は語る。

現在、野口氏は富士山の麓にあるもっとも静かな湖、西湖のほとりにある廃校の二階に事務所を構え、山梨・大月にある築50年の古民家を自宅として自然と共生した暮らしをしている。また、四角氏は会社員をやめて2010年からニュージーランドに移住し、原生林に囲まれ、目の前に湖がある自宅でオーガニック野菜や果物などを育てながら、多種多様な野生魚を釣って食し、ほぼ自給自足の生活を楽しんでいる。

逃げてもいい。ポジティブエスケープをしよう。

一見順風満帆なサクセスストーリーを辿ってきたように見えて、実は幼少期に周囲になじむことができず苦労したという共通点を持つ両氏。そうした環境のなかで自分を見失うことなく生きるための方法として四角氏が提案したのが、「ポジティブエスケープ」という考え方だ。

大学を卒業して会社員になってからも周囲にうまく合わせることができず苦労を重ねていた四角氏は、「新しいことをやろうとすると、反対されたり、まず無理と言われたりする文化がしんどいなと思っていた。僕の場合はそこから一人で自然の中に入っていくという逃げ道を持っていたので壊れなかった。逃げるというとネガティブなイメージがあるが、『逃げる』は英語で『Escape(エスケープ)』と書き、エスケープにはバケーションという前向きな意味もある。だから、僕は『ポジティブエスケープ』、前向きな逃げ道を持てば人生は大丈夫だと提唱している」と語った。

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「学校や会社など閉鎖的な世界でその場所になじめないと、自分がだめだと思ってしまい、どんどん落ち込んでしまう。特に会社員になると、会社を辞めると人生が終わるのではと思いこんでしまい、それで辞められずに自分の心と体に嘘をつき、どんどんと壊れてしまう。それではせっかく地球と母親から授かった命の無駄づかい」だというのが四角氏の考えだ。

同氏の場合は、会社員の頃から、いざとなればニュージーランドに行って自給自足の生活をすれば大丈夫だと考えていたのが精神的な逃げ道になっていたそうだ。

一方、野口氏は別の切り口から「逃げる」ことの大事さを語った。野口氏は、96年にエベレストに行こうとしたとき、出発直前になってもどうしても嫌な予感を拭うことができず、結局はその年の登山をキャンセルしたという。結果、その年のエベレストは悪天候に見舞われ、野口氏が参加する予定だった隊がほぼ全滅するという事故が起きた。その経験をして以来、自分の直感を大事にしているという。

「自分は1回しか死ねない。だから、なんか嫌だ、しっくりこないというときは山を下りると決めている。心に従うと、たいがい正しいことが多い。他の隊に野口は登れなかったと思われたくないとか、どうしても人の目を意識してしまうが、そういうときに落とし穴がある」と野口氏は語る。

両氏の意見に共通していたのは、自分の心や直感に従うことが何よりも大切だということだ。

ブランディングとは、ありのままの自分になること。

それぞれが違うきっかけを持ちながらも、自然と向き合うことで自分の心や直感を大事にすることを学んできた両氏だが、音楽プロデューサーとして数多くのアーティストのブランドを創り上げてきた四角氏は、ブランディングという視点から自分らしくあることの大切さを語った。

「ブランディングとかブランドと聞くと、よりよく見せる、上に重ねていくようなイメージがあると思いますが、それは全くの逆です。とことんブランドを突き詰めた僕が断言できるのは、100%を届けるのがいかに難しいかということ。手がけたアーティストの歌声を目の前で聞くと震えますが、CDにするとその100%は届かない。だから、僕は、どうすれば100%になるかを考えてやっていました。」

「登山でいうと分かりやすくて、無理して120%や130%のペースで登り続けるのは無理です。背伸びをせず、自分の足で一歩ずつ自分のパワーで歩いていくしか登山を成功させる方法はないですよね。これは生きるのも同じだと思っていて、つまり自分の100%は何なのかをまず把握することが大事。それではじめて生き方が決まる。自分が100%なのに、70%、80%で終わるのも命の無駄づかいだと思う。では100%に持っていくためにはどうすればよいのかを常に考える。」

「アーティストというと芸術に携わる人のことをイメージしてしまいがちですが、僕は『人は誰もがアーティスト』だと思っています。僕らは生き方そのもので表現活動をしている。頭ではなく心の声に従って行動すれば、おのずと本当に自分がやりたいことや好きなことがはっきりと分かってきて、それを自分自身で突き詰めることこそがブランドになると思っています。ワクワクする気持ちは心から来る。心の声に従って生きるというのが実は一番正しい。」

ブランディングとは自分をよりよく見せることではなく、本来の自分の心の声にしっかりと耳を傾け、それを表現することから始まる。数々の著名アーティストをブランドとして世に送り出してきた四角氏のアドバイスにはとても強い説得力がある。

また、野口氏は「ワクワクし続けるのは難しい」としたうえで、それを乗り越えるには、自分の状態をよくすること、「やりたいこと」と「やらなければならないこと」のバランスをとるのが大事だと訴えた。同氏の場合は、ヒマラヤに何度も行くうちに徐々にそれが当たり前になり、当初のワクワク感を失ってしまった。

しかし、あるときレミオロメンの藤巻亮太氏と一緒にウガンダに行ったとき、藤巻氏が楽しそうに写真を撮っているのを見て、もともとは自分もカメラマンになりたかったという少年時代の夢を思い出し、それからは写真を撮りたいという気持ちから再び山に登るようになったという。結果、今まで何十回と行っていても気づくことができなかったヒマラヤの美しさを改めて再認識し、今では登山が楽しくて仕方がなくなったそうだ。

四角氏も野口氏の話に共感しつつ「やらなければいけない、となるとつまらなくなる。心は答えを知っているけど言葉を持っていない。頭は言葉を持っているので余計な指令を出してくるが、心は言葉を持っていないから、違和感や感動といったあいまいな身体感覚として伝えてくる」と話し、自分の体と心に素直になることの大事さを強調した。

旅を再定義する。

心の声に従うことが大事だと口を揃える両氏だが、その声はとても小さいので、都会の雑音に囲まれて暮らしているとなかなか聞きとることができず、ついつい自分の心とは裏腹に周りの評価や世間体に流されて行動してしまう。そんな生活をやめるうえで両氏がおすすめするのが、「旅をする」という方法だ。

毎年1ヶ月~3ヶ月ほどをかけて10ヶ国ほどを旅し、これまでに60ヶ国以上の国を回ってきたという四角氏は、「旅をすると日常から非日常に行ける。すると頭の中がリセットされて、本来の自分を取り戻せる。旅を再定義してほしい。僕らみたいに山に入るのはハードルが高いが、日常とは違う場所に行くだけでもよい。僕は散歩でも旅だと思っていて、一歩手前の駅で降りてみるだけでもたくさん発見がある」と語った。

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また、野口氏は「旅とは好奇心。好奇心がなくなると旅をしなくなる。好奇心があって旅をするというのが普通だが、順番を変えてもよいと思っている。旅をすることで好奇心が出てくることもある」と話し、興味が湧かなくてもまずは一歩を踏み出してみることの大事さを訴えた。

旅に出て都会の雑音から離れると、自分の心の声がよりクリアに聞こえるようになり、本当にやりたいことが見えてくる、というのは共感できる人も多いだろう。

自分を本気で大事にすれば、自然も大事にできるはず。

自然に触れたり旅に出たりすることで本来の自分を取り戻し、心の声に従うことが、今回のイベントのテーマである「地球との共生」とどのようにつながってくるのだろうか。その答えについて、四角氏はこう話した。

「僕も小さいころから自然の中に入っていたが、自然の中にいると自然の変化が分かる。僕は特に魚釣りが好きだが、水域はもっとも環境の変化を受けやすい。水中の魚は逃げ場がないので、釣りをしているとよりダメージが分かりやすい。世界中を旅していても、本気で環境問題に取り組んでいるのはサーファーだったり釣り人だったり登山家だったりする」

野口氏も、自然と触れることの重要性について「講演をしによくいろいろな学校に行くが、今の小学生は環境問題に詳しいし、知識はある。ただ、自然体験があるかというとそうではなく、頭から入っている。私がやっている環境学校では、最初に一人ずつスピーチをしてもらうが、みんなそれらしいことを話しているものの、自分の言葉ではないのでなかなか僕の頭には残らない。それが、2日、3日、4日目となると自分で感じたことが言葉になっていくので、彼らの言っていたことが頭に残る。やはり、自然体験なしに環境問題を考えるのは成り立たないと思います。」と説明した。

二人のメッセージに共通する点は、自然環境の問題をジブンゴト化するうえで一番の方法は、自然と触れるということだ。自然に触れることで、自分を取り戻せるだけではなく自然の大事さも心で実感できるのだ。

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また、自分と自然との関係について、四角氏は私たちが生きるうえで従うべきルールは「自然の摂理」と「心の声」の二つしかないとしたうえで、「僕ら人間の体は100%メイド・イン・アースで有機体。全て自然界の物質でできている。だからこそ、心から出てくることやワクワクすることに他の生き物や地球を傷つけるものはないはず」と話した。

「やるべきことは、やりたいことを実現するためだけに存在していると思っている」と断言する四角氏は、やりたいことだけにフォーカスすることは仕事のパフォーマンスという意味でも実利があると強調する。

「頭で考えても最強モーターは回らない。最強のモーターは心にあるので。やりたいことをやる時、誰もがパフォーマンスも上がる。集中力も、クリエイティビティも高まるし、楽しいからどんどん前に進むし行動力も増す。こころは再生可能エネルギーのような動力源なので、ずっと回り続ける。これを起動させることで自分も仕事もうまくいく。つまり、実利があるということ。内側から湧いてくる好き、やってみたい、楽しいという気持ちに従うのが大事。」

こころは再生可能なエネルギー。自分の心の声に従い、自分を大切にすることで、結果として自然や地球環境も大事に思えるようになるというのが野口氏、四角氏の結論だ。

イベントの最後、野口氏は「自分のことを大切にする。自分を大切にしなければ、地球環境のことは大切にできるわけがない」と話し、まずは環境を語る前に自分を大切にするところから始めることの重要性を訴えた。

また、四角氏は「自分のことを大切にしようと僕もよく言うが、それは他人のことはどうでもいいということではない。自分のことを本気で大切にしようと思ったら、パートナーや家族が必要。家族を大事にすることは自分を大事にすること。でも、自分が住んでいる街がすさんでいたら、家族を大事にしきれない。だから街をきれいにしようとなる。街がきれいになっても国が突然おかしなことになったらだめ。だから投票しに行く。

そして国が整ったとしても、地球環境が悪くなったら住めなくなる。本気で自分のことを大事にするということは、地球を大切にすること。僕たちの体は100%地球産の有機体だから、自分を大切にすることは自然を大切にすることだと、体の真ん中にある心では理解できるはず。もう一度、自分を大切にするということの意味を考えてほしい」と話し、イベントを締めくくった。

編集後記

今回のイベントを通じて野口氏、四角氏が一貫して主張していたのは、自分を大事にすることと、自然を大事にすることは同じだということだ。人が多い都会の生活では周囲の目が気になってしまいがちだが、都会の雑音から距離を置き、自然に触れることで、本来の自分を取り戻すことができるだけではなく、自然の変化も感じられるようになる。

自分を大事にするということを突き詰めると、めぐりめぐって自然を大事にするということにつながっていく。もともと自然から生まれた私たち人間は、そもそも自然とつながっており、共生している。

便利で豊かになり、自然と離れた都会の暮らしをしているとなかなかそのことに気づけないが、旅を通じて自然と触れる機会さえあれば、そのことに気づくことができる。

大自然の中で暮らし、自分のやりたいことを追求して自分らしい人生を送っている二人の言葉には、環境を大事にするということの本質をとらえたメッセージが詰まっていた。

きれいな空気、きれいな海、おいしいご飯。頭で考えるのをやめて心の声に従えば、地球が与えてくれる恵みこそ、本来の私たちが求めていたものであることに気づくことができる。環境問題をどこか他人事のように感じてしまうという人は、もしかすると自分の人生もいつのまにか他人事のようになっていて、大事にできていないのかもしれない。

環境への感度は自分の人生に対する感度のバロメーターだと思えば、何を変えるべきかが自然と見えてくるはずだ。日々の暮らしに忙殺されて自分のやりたいことが分からなくなっているという方は、少しでもいいから、身近な自然に飛び込んでみよう。

※このトークセッションの模様は2月24日(日)19時からTOKYO FMをはじめとするJFN38局ネットで配信されます。興味がある方はぜひ当日の様子をお聴きください。

『コスモ アースコンシャス アクト 野口健 トークセッション』番組概要

  • 放送日時: 2019年2月24日(日)19:00~19:55放送
  • ※一部時間違い/お聴きの放送局のHPをご覧ください
    ※ラジオ放送終了後、ビデオPodcastを配信します。

  • 放送局: TOKYO FMをはじめとするJFN38局ネット
  • 出演:野口健、四角大輔、綿谷エリナ
  • 提供:コスモ石油
  • 番組HP:https://www.tfm.co.jp/earth