世界中で年間およそ300万トンも生産されているペットボトルであるが、いったん投棄されると海の中で自然分解されるのに450年かかるという試算もあり、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題が深刻だ。プラスチックボトルからガラス瓶へ立ち戻る動きもあるが、ガラス瓶の場合、砂や石灰岩などの素材を天然ガスで溶かす製法がほとんどで、生態系が乱されたり、プラスチックよりも重いために、搬送の段階でより多くのCO2が排出されたりと、プラスチックとは異なる問題を抱えている。
イギリスの酒造企業であるDiageo(ディアジオ)社は、200年の歴史を持つ同社のウイスキーである「ジョニー・ウォーカー」を2021年に紙ベースのボトルで販売することを発表した。ボトルは100%プラスチックフリーで完全にリサイクルされるという。同社はジョニー・ウォーカーの他にも、ウォッカのスミノフやギネスなど、日本でもなじみのある蒸留酒ブランドを保有しており、世界180以上の国々で商品を販売するアルコール飲料のグローバルリーダーである。
通常紙パックの場合は、内側をプラスチックでコーティングすることで水漏れを防ぐが、この紙ベースのボトルは内側がプラスチックではなく樹脂でコーティングされており、中の液体が漏れない構造になっている。さらに樹脂コーティングはボトルが空になった後に分解可能で、キャップはアルミニウム製だ。
ボトルを開発したのは、ディアジオ社がベンチャー企業支援会社パイロットライトと共同で立ち上げたパッケージ開発企業、Pulpex(パルペックス)社だ。パルペックス社は持続可能なパッケージ技術の研究開発をしており、ディアジオ社以外にも、ユニリーバやペプシコなどにもパッケージ技術を提供するという。
ディアジオ社のサステナビリティ最高責任者であるユアン・アンドリューは次のように公式サイトで述べている。
「これまで、サステナブルなパッケージの範囲を広げるために努力してきた私たちが、この紙ベースのボトルを世界で最初に作成したことを誇りに思います。そしてこの革新的なボトルは、200年の歴史の中でイノベーションをリードしてきたブランドであるジョニーウォーカーこそ、使うべきであると、私たちは感じています。」
これまでIDEAS FOR GOODでも、デンマークのビール醸造会社カールスバーグが発表した環境に配慮した紙製ボトル「グリーンファイバーボトル」や、コカ・コーラも支援している、オランダAvantium社の砂糖でできた「土に還るペットボトル」などを取り上げてきたように、飲料会社が容器をサステナブルな素材に変える動きが盛んになってきている。こうした流れが、消費者一人一人の意識を変えていくのだろう。
【参照サイト】 Diageo announces creation of world’s first ever 100% plastic free paper-based spirits bottle