公園や歩道に設置されている公共トイレ。海外では有料の公共トイレも多いので、無料で使える日本のトイレは有り難いが、実際に利用する人は多くない。その理由は、「汚い」「臭い」「中に誰かがいそうで怖い」といった、人々が持つネガティブなイメージだ。そんな公共トイレへの印象を変えるため立ち上がった、日本財団によるプロジェクト「THE TOKYO TOILET」が世界で話題を呼んでいる。
中でも注目されているのが、はるのおがわパークに設置されたトイレだ。壁全体が透明で、中の様子が見えるデザインになっている。壁を透明にすることで、「中が綺麗か?」「誰もいないか?」を外から確認することができる仕様で、公共トイレの汚い・怖いというイメージを払拭することが狙いだ。
とは言え、透明では中が透けて見えてしまい利用するのをためらってしまうかもしれないが、心配する必要はない。利用時に鍵を閉めると壁が不透明に変わり、中が見えなくなる仕組みになっている。
恵比寿公園のトイレもまた「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一つであり、遊具やベンチや樹木のように何気なく公園に佇むオブジェクトとしての在り方がコンセプトだ。縄文時代の土や木材で作られた質素なトイレの佇まいをイメージし、コンクリートの壁15枚の組み合わせから成る。男性用・女性用・だれでもトイレという3つの空間を作り、まるで人々が遊具と戯れるようなユニークな関係性をデザインしたという。
「THE TOKYO TOILET」プロジェクトは渋谷区の協力を得て、多様性を受け入れる社会の実現を目的とし、性別・年齢・障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレを渋谷区内17カ所に設置する予定だ。
現在完成しているのは5カ所だが、2021年の夏までにはすべてのトイレの設置を終える予定だ。
デザインを手掛けるのは、世界で活躍する16人のトップクリエイターたち。すぐれたデザイン・クリエイティブの力で、インクルーシブな社会のあり方を広く提案・発信することを目的としている。
本プロジェクトを手掛けた日本財団は、IDEAS FOR GOODのメールインタビューに対し、プロジェクトを通して人々に伝えたい価値観について以下のように答えている。
「機能やデザイン性に優れた誰もが快適に利用できる公共トイレを起点に、多様性や思いやりのある社会をつくっていきたいと考えています。また公共トイレは5年、10年と利用いただくものです。このプロジェクトではトイレが完成した後のメンテナンスやマネジメントも重要と考えています。清掃をはじめとした維持管理に力を入れ、皆さまに気持ちよく利用していただけるよう、さらには、利用いただく方が次に使う人のことを思ってきれいに利用しようと思っていただけるような循環を生み出していきたいと考えています。」
日本人の「おもてなし」文化を象徴するトイレ。東京から公共トイレの新しいイメージが発信され、誰もが使いやすい環境が整うことを期待したい。
(画像提供:日本財団)
【参照サイト】 渋谷区内17のトイレが生まれ変わる「THE TOKYO TOILET」プロジェクト メディア公開
【参照サイト】 THE TOKYO TOILET
Edited by Erika Tomiyama