ビールが会話を促すメディアに。人種差別について考える黒ラベル

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2020年5月下旬、ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイド氏が警察官に殺害されて以降、全米に広がったBLM運動。その抗議活動は数か月経った今も続いており、8月下旬にはオレゴン州でBLM運動のデモ参加者とトランプ大統領の支持者が衝突して1人が死亡するなど、各地で混乱が起きている。暴力ではなく対話によって平和を広める取り組みが、今のアメリカで強く求められている。

ニューヨークのブルワリーである「Finback Brewery」は、お酒を飲む人たちにBIPOC(黒人、先住民、有色人種)についての対話を深めてほしいとの願いから、「Breathing: Conversations(息をする、話をする)」という名前のビールを醸造した。ビール缶のラベルは黒色で、向かい合って話をしているように見える男女の横顔が印刷されている。

Breathing: Conversations

Image via Breathing: Conversations

Finback Breweryはこのビールをきっかけとして、他のブルワリーも含めすべての人に人種について話し合ってほしいと呼びかけ、そこで感じたことを缶のラベルに記録するよう伝えている。さらに希望する人は、会話の内容を文章にするなり絵にするなりして、ソーシャルメディアに投稿してもいい。Finback Breweryは「#BreathingConversations」というハッシュタグを使って、人々の会話を共有するという。

また、この取り組みでは、参加したブルワリーにその収益のすべてまたは一部を、人種間の平等を求めて活動する慈善団体に寄付するようお願いしている。Finback Breweryは「Southern Poverty Law Center(南部貧困法律センター)」と「Black Lives Matter」へ寄付を行い、今後も同じようなミッションを掲げる人々を支援していくという。

人種について話し合うのは、人によっては気まずく、落ち着かず、傷ついてしまうこともあるかもしれない。しかしジョージ・フロイド氏が亡くなり、世界が悲しみに暮れた今だからこそ、私たちは対話を重ねなければならないだろう。Finback Breweryの取り組みには多くのブルワリーが賛同し、9月上旬時点で40あまりのブルワリーが参加している。

Finback Breweryはウェブサイトで「Breathing: Conversations」のレシピを公開しているが、参加するブルワリーはビールのつくり方を変えても構わないという。美味しいビールをつくることはもちろん大切だが、今回の取り組みでより大切なのは対話の土台をつくることだ。今こそ、社会で虐げられてきた人々の声に耳を傾けよう。

【参照サイト】 Breathing: Conversations

Edited by Erika Tomiyama

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