タイのカオヤイ国立公園は、同国で初めて認定された国立公園であり、2005年には世界自然遺産に登録された。カオヤイとはタイ語で「大きな山」という意味だ。その総面積は2168平方キロメートルにも及び、絶滅の危機に瀕した動物も含め様々な動植物をみることができる。
周辺に観光施設が充実し、園内でも様々なアクティビティを楽しめるカオヤイ国立公園だが、近年は自然環境に対する観光の影響が問題になっている。2019年に国土交通省が公開した報告書によると、タイ全国で154か所ある国立及び国定公園のなかでも特に、カオヤイ国立公園を含む6か所の国立公園において、オーバーキャパシティ等の問題が顕著に現れているという。
多くの観光客が訪れることによって起きる大きな問題のひとつが、ごみの不適切な投棄だ。カオヤイ国立公園は、公園内でのポイ捨てが犯罪であり、動物がごみを誤飲する危険性があることを認識してほしいとの考えから、ポイ捨てをした人たちにごみを送り返す取り組みを始めている。ペットボトルなりお菓子の袋なり、その人が公園に捨てたごみが家に送られてくるのだ。
送り返されるごみには「カオヤイ国立公園での忘れ物です」と書かれたメモが付いているという。同国立公園に訪れる人は住所を登録する必要があるため、公園管理者はポイ捨てをした人たちを追跡しやすい。同国のワラーウット・シンラパアーチャ天然資源・環境相も、自身のフェイスブックに送り返すごみの写真を投稿し、ポイ捨てに厳しく対応する姿勢を示している。
カオヤイ国立公園に限らず日本国内でも、観光客によるごみの投棄が問題になっている場所は多い。観光地によっては、ごみ捨てに関する注意喚起をしたり、ごみの持ち帰りを促すためにごみ袋を配布したりしている。旅行者のみなさんは、コロナ禍で新しい旅のエチケットを実践しながら、自然環境に配慮したレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)を心がけてみよう。
【参照サイト】 環境と観光の両立のための持続可能な観光客受入手法に関する調査業務
【参照サイト】 Thai national park sends rubbish back to tourists
Edited by Erika Tomiyama