2020年7月、日本では新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)で落ち込んだ旅行需要を喚起するためのGo Toキャンペーンが始まり、国内旅行や外食産業が再び賑わいを見せ始めた。しかし、新型コロナはいまだ多くの国で猛威を振っており、依然として国外への移動は難しい状況にある。海外の観光地をオンラインで疑似的に訪問するバーチャルツアーなども開催されてはいるが、実際にその土地を訪ね、五感を使って体験する旅行とは感覚が異なるのも事実だ。海外を訪れ、現地の人々や異なる文化と触れ合えるようになる日が再び来るのを待ち遠しく思う人も多いのではないだろうか。
今回の記事では、世界各地のソーシャルグッドなブランドと、そのブランドストーリーを紹介していく。海外に渡航できない今、アイテムの背景にあるストーリーに想いを馳せることで、少しでも遠い国の「空気感」を味わってもらえると嬉しい。
「ストーリー」で選ぶ、世界のエシカルアイテム
今回紹介するのは4つのブランド。日本からもネットで購入が可能なので、気になるものがあればぜひサイトをのぞいてみてほしい。
1.ヨーロッパのヴィンテージレースをアップサイクルしたアクセサリー
以前IDEAS FOR GOODでも紹介したスペインのColette Barcelona(コレット・バルセロナ)は、ヨーロッパの家庭で使われなくなったヴィンテージレースを、一つ一つ異なるデザインのアクセサリーとしてアップサイクルしている。
スペインでは昔、女性たちがよく編み物をしてテーブルクロスやコースターなどを作っており、各家庭に「その家に伝わるレースのアイテム」があったそうだ。今ではマーケットで捨てられるように売られてしまっている古いレースも、かつてどこかの家のお母さんやおばあさんが手編みをしたものだろう。
「『新しいもの』を使うのではなく『既にあるもの』をアップサイクルすることで、ものに込められたストーリーを繋ぎ、限りある地球の資源を守る」というのが、Colette Barcelonaの願いだ。また、集めたレースの色づけにアボガドの種子や茶葉などを使った植物染色を利用するなど、環境負荷を抑えた製作方法を取り入れているのも特徴である。
アクセサリーを通して美しいヨーロッパのヴィンテージデザインに触れ、「昔の人々が紡いできた暮らし」に思いを馳せながらファッションを楽しんでみてはいかがだろうか。
2.作り手と使い手の「人生の旅路」が重なる。アジアの農村女性がつくる布・革製品
かわいいもの、美味しいもの、便利なものを「安い価格で」手に入れたい──消費者のそうしたニーズが満たされる裏側で、商品の作り手が不当に搾取されたり劣悪な環境で働かされたりしていることもある。しかし、私たち消費者が買い物をするとき、「どこで誰がこの商品を作ったのか」といった情報を得られる機会はほとんどない。だからこそ、現在の消費生活において消費者が作り手のことを思い浮かべたり、置かれた状況をおもんぱかったりするのは難しいこととなってしまっている。
「作り手と使い手が健康的な関係で結ばれたものづくりを実現したい」——その信念から、カンボジアの農村に工房を持つSALASUSU(サラスースー)では、教育機会に恵まれなかった女性たちの「Life Journey」を支えるものづくりを追求している。彼女たちが安定した収入を得られるように、工房でトレーニングを受けながらSALASUSUで働く機会を提供し、結婚や出産などでライフステージが変わっても仕事を続けられるよう、給食や託児所も用意している。
作り手と使い手の間にある見えない壁を取り払うため、SALASUSUの商品には作り手の名前が記されている。きっと使うたびに、遠い空の下にいる作り手たちのことが頭に思い浮かんでくるだろう。
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3.植物の溢れるエネルギーを享受する、南米発のビオジュエリー
生物多様性の宝庫とも言えるブラジルでは、木の実や、草や椰子の葉の繊維など自然素材を用いたアクセサリーを「Biojoias(ビオジョイアス)」と呼ぶ。そのブラジルの豊かな自然の恵みに敬意を表し、植物素材のアクセサリーに「ビオジュエリー」との訳語を付けて販売しているのが Coloridas(コロリーダス)だ。
Coloridasが用いるのは、生産過程に搾取がないことが確認され、自然サイクルに配慮した方法で収穫されたた素材のみ。例えば、世界でもブラジルの一部の地域のみに自生する「カッピンドウラード(黄金の植物)」。職人たちが一本一本手摘みするのだが、その際に、来年も無事に生えてくるように種を含んだ花をその場に落とすようにしているのだという。
またColoridasでは、アクセサリーを加工する職人達と直接取引を行うことでブラジルの伝統工芸の保護にも努めている。自然と職人達を保護しながら作られるビオジュエリーは、ブラジルの自然のエネルギーを感じられるアイテムばかりだ。
4.作り手も使い手も元気にする。彩り豊かなアフリカンプリント
アフリカでの雇用と教育の創出を目指すCLOUDY(クラウディ)は、カラフルなアフリカンプリントを用いたポーチやシャツなどを販売するブランドだ。ガーナの首都から車で1時間ほどの距離にあるリベリア難民キャンプや小さな農村にある工場で、女性たちが縫製を行っている。
生地には、カラフルで同じ柄が連続したデザインが特徴のアフリカンプリント「キテンゲ」が用いられる。キテンゲは、普段着から儀式など様々な用途に使われており、人々の生活に密着しているものなのだそうだ。
CLOUDYで働くお母さんたちは、生まれつき障害を持っていたり、シングルマザーだったり……と、それぞれに異なる問題を抱えている。カラフルなCLOUDYの商品にはそんな彼女たちの世界を少しでも彩り豊かにしたい、という願いが込められているのだそうだ。
アフリカのお母さんたちが一つ一つ丁寧につくる製品は、彼女たちの生活をより良くする「希望の光」。その彩鮮やかなデザインは、使い手の心まで晴れやかにしてしまうことだろう。
まとめ
世界各地のソーシャルグッドなアイテムとブランドストーリーをご紹介してきたが、いかがだっただろうか。「買う」ということは、商品を通して作り手たちと「繋がる」ことだと言っても過言ではない。直接現地に訪れることが難しい今だからこそ、作り手の顔が見え、作られる過程と素材がわかる商品を選んでみてほしい。
【参照サイト】Colette Barcelona
【参照サイト】SALASUSU
【参照サイト】Coloridas
【参照サイト】CLOUDY
Edited by Yuka Kihara