「過去」と「現在」を超えて人をつなぐアップサイクル。バルセロナ発レースアクセサリー店

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使われていないものの個性を活かし、手を加えることで新たな付加価値を生む。近年注目を集めている「アップサイクル」について、IDEAS FOR GOODでも日本の着物をアップサイクルしたファッションブランドなどを紹介してきた。

筆者の住むバルセロナでも、若手デザイナー達がアップサイクルに取り組んでいる。その中でも一際注目を集めているのが、スサナ・ソレル(Susana Soler)氏が手がける「コレット・バルセロナ(Colette Barcelona)」だ。約8年前に同ブランドを立ち上げて以来、スサナ氏は使われなくなったテーブルクロスやウェディングドレスから切り取ったレースを、ノスタルジックながらも現代のファッションにも合わせやすいデザインのアクセサリーとして蘇らせてきた。

バルセロナ アップサイクル

コレット・バルセロナ(Colette Barcelona)店舗

「ファッション業界では次々と新しいものが生み出されています。しかし、長い歴史の中で既に多くのものが作られ、世の中はもので溢れてしまっているように感じます」スサナ氏は話す。「古くなり一見価値がなくなったように見えても、デザインや品質の素晴らしいものや、作り手や使い手が大切に扱ってきたものが残っています。『新しいもの』を使うのではなく、『既にあるもの』をアップサイクルすることで、ものに込められたストーリーを繋ぎ、限りある地球の資源を守ることにも繋がると考えています。」

ビンテージ素材がアクセサリーに生まれ変わるまで

「既にあるもの」をアクセサリーに用いるため、素材の調達やアクセサリーの制作プロセスもユニークだ。コレット・バルセロナの代名詞とも言えるビンテージ・レースには、様々な土地のマーケットから買い付けられたビンテージのレース生地が用いられる。レース生地を丁寧に切り取り、色染めをした後に、レース本来のデザインが崩れないように加工が施される。余ったレース生地は、他のデザインのアクセサリーに使われる。全てスサナ氏の手作業だ。

スサナ氏

スサナ氏

ネックレスのチェーンやピアスの装飾に使われる金具には、40~50年前の真鍮(しんちゅう:銅と亜鉛の合金)が用いられる。レースも金具もビンテージのため、その時によって手に入るデザインも分量も異なり、同じ素材は二度と手に入らない。入手できた素材を元にデザインを考えるため、コレット・バルセロナのアクセサリーは非常にバラエティ豊かだ。立ち上げ当初は必要な生地や金具が手に入らず苦労したこともあったそうだが、専門の業者を見つけるなど、調達先の確保にも力を入れてきた。

また、最近ではブランドのコンセプトに共感した町の人が、家で使わなくなったレースを工房まで持ってきてくれることもあるそうだ。「ビンテージ・レースの調達には困らなくなってきた」とスサナ氏は嬉しそうに話す。

ブランドの誕生と成長

コレット・バルセロナを始める以前は、スサナ氏はビジネス・マーケティングの分野でキャリアを築いていた。しかし10年程前に立ち寄ったマーケットで、大量のビンテージ・レースが無造作に売られていたことにショックを受けたと言う。

「スペインでは昔、女性たちがよく編み物をしてテーブルクロスやコースターなどを作っていたので、『家に伝わるレース』が各家庭にありました。マーケットで捨てられるように売られている古いレースも、そういったどこかのお母さんやおばあさんが作ったものだと思うと居た堪れなくなり、何とかしようという思いでレースを買い取ったのがきっかけでした。」

バルセロナ アップサイクル

ビンテージレースのアクセサリー

幼少期から手芸が好きだったこともあり、購入したビンテージ・レースを元に自分でデザインを考えながらアクセサリー作りを始めたスサナ氏。始めた当初はブローチやブレスレットを作り、友人や知人にプレゼントしていたそうだ。徐々にバルセロナ市内の雑貨店にも置かれるようになり、より広い作業スペースを求めて作業場も自宅からコワーキングスペースに移した。そして、世界各地からの観光客で賑わうバルセロナ旧市街で、工房兼店舗を構える程に成長した。つい3ヶ月前には、待望の2店舗目が旧市街にオープンしたばかりだ。

第1号店舗にある工房スペースでは、訪れた人々が自由に彼女の作業場を見ることができ、ワークショップも開催されるそうだ。ブランドの透明性を重視する彼女が、ビンテージ・レースがどのようにアクセサリーとして生まれ変わるか、作成過程や素材が来訪者からも見える形にしたためだ。

現在はアクセサリーのラインナップも広がり、ショートネックレス、ロングネックレス、チョーカー、ブレスレット、ピアス、襟飾りなど、個性的で様々な付け方を楽しむことができるデザインが充実している。

バルセロナ アップサイクル

付け方のラインナップが広がる

またアクセサリーの一般販売の他に、「自分の持っているレースを元にアクセサリーを作って欲しい」という個別の依頼にも応えている。ウェディングドレスや家庭で使われてきたテーブルクロスなどを、より日常的に使えるようにアクセサリーにアップサイクルして欲しいと、日本を含む各国から依頼があるそうだ。

「大切なレースを託されることは、とても光栄で自分の仕事を誇りに思う瞬間」とスサナ氏は話す。その一方で、大切に保管されてきたレースにハサミを入れる瞬間は、長年経験を培ってきた彼女にとってもやはり緊張するそうだ。あるプロジェクトでは、50年前から保管されてきたビンテージ・レースが海を渡って彼女の元に届き、依頼主とその家族が身に付けられるようなアクセサリーを作成したという。

 

サステナブルなものづくりのための挑戦

スサナ氏の現在の挑戦は、コレット・バルセロナをさらに環境に配慮したブランドにすることだ。「アップサイクル」に加え「サステナブル」をもう一つのテーマに掲げている。レースの色染めに化学染料ではなく天然染料を使おうと、近くの森から葉や果物を採取し、色染めの実験を繰り返しているそうだ。

既に、同ブランドで人気の高いピンクカラーはアボカドの種を、ベージュカラーは茶葉を煮出すことで、天然染料の作成に成功。これらを使って着色したレースのアクセサリーを販売している。レースを漬け込む時間によって色の濃淡が異なるため、より味わい深いアクセサリーに仕上がっている。

アップサイクル バルセロナ

ビンテージレース

インタビュー後記

コレット・バルセロナの魅力は、可愛く個性的なデザインに加え、アップサイクルを通して実現しようとしているそのストーリーにあるのだろう。スサナ氏へのインタビュー中も、店舗には途切れることなく来客が続いていた。スサナ氏自身も、店舗に訪れる多くの方がブランドコンセプトに共感をしてくれることに驚いていた。

スサナ氏が手がけるアクセサリーを通して、アップサイクルに共感する人々、ビンテージ素材の提供に協力をする人々、アクセサリーを身につける人々の間で新たな繋がりが生まれている。古いものに新しい付加価値を加えるアップサイクルは、「過去」「現在」という時間的な距離と共に、「街」「地域」「国」といった物理的な距離を超えて人々を繋ぎ、新たな可能性を生む力があるのかもしれない。