バングラデシュの村に誕生。障がい者と女性のための「泥」でできた施設

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「アジアの最貧国」「後発開発途上国」。かつて、そのように言われていた国・バングラデシュは、近年急速に成長を遂げ、貧困率の減少が見られる(※1)。しかし、同国の貧富の格差は広がっているとされ、いまだ人口の3割ほど、およそ4,000万人もの人が貧困に苦しんでいるという(※2)。特に社会的に弱い立場にあるのが、ハンディキャップを持つ人や女性であり、中でも障がい者といわれる人は社会の中でも見えづらい存在となっている。バングラデシュでは、「障がい=神や前世の悪いカルマからの罪や試練」だと見なされることが多く、彼らに対するケアの場は、ほとんど存在しないからだ。

そんな課題を解決すべく、今回バングラデシュ北部の村・ルドラプール(Rudrapur)に登場したのが、ハンディキャップを抱える人と織物の生産を行う村の女性たちのための施設・アナンダロイ(Anandaloy)だ。地元の素材と人、グローバルなノウハウを生かしたプロジェクトづくりが得意なドイツの建築家、アンナ・ヘリンガーによってつくられた。

バングラデシュ

Anondoloy_(c)Stefano Mori

アナンダロイの特徴は、建物の大部分の原料である竹と泥が、障がい者を含む、村出身の労働者などの農家によって提供されていることと、土地の契約者がバングラデシュ人であることだ。単なる建築物ではなく、その場に既にあるリソースを活かした地域の発展に大きく貢献するプロジェクトで、アンナが欧州やアジア、アフリカなどで取り組んできた他の事例と比べても、地域の人たちへのノウハウの伝達が上手くいっているとされている。

同施設のコンセプトは、障がい者が抱えるトラウマの治療だけでなく、彼ら自身が学び、働くことでコミュニティへ関わってもらうこと。元々は、障がい者の治療に特化した施設にする予定だったが、村の女性の就労支援も行うため、織物の生産場所としても使えるようにした。織物は、多くの女性たちが生計を立てている手段でありながら、販売されるものにはグローバルな縫製基準が求められるため、搾取される傾向にある。そんな「楽しくない」織物から、地元の伝統的な技術を基にした織物の生産をするべく、アンナが始めたプロジェクトの一つだ。

バングラデシュ

Anandaloy: Centre for PwD + tailoring workshop_Studio Anna Heringer___©_KURT HOERBST 2020

さらに、この建物の建築方法には、強いメッセージが込められている。建築素材として使われている泥は、バングラデシュでは「貧しい」「古い」といったイメージを持たれやすい素材であり、レンガなど他の素材よりも劣っていると見なされる。そこで、今回のプロジェクトでは、泥を単なる「劣化版レンガ」として扱うのではなく、その特性を生かして曲線のあるつくりにすることで、その美しさと泥の可能性を証明している。

アンナによると、この“踊るような曲線”のある建物には、私たち人間一人ひとりがユニークな存在であるというメッセージが込めれているという。自然の素材で環境にも、どんな人にもやさしいアナンダロイのような施設が世界中で増えていくことを願う。

※1 経済産業省より
※2 外務省より

【参照サイト】Anandaloy: Centre for People with disabilities + Dipdii Textiles studio

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