イギリスの高級スーパーチェーンであるウェイトローズ(Waitrose)がこのほど、農場で飼われている動物のウェルビーイングをはかるスマートフォンアプリの開発を発表した。生産者の人々が、動物たちの心理的な状態を正確に把握できるようにすることで、農場の動物福祉を改善するものだ。
現時点で対象となっているのは、乳牛、子牛、豚、採卵鶏、鶏、アヒルの6種類の動物。「定性的行動評価(QBA)」と呼ばれる科学研究を根拠に、ボディランゲージやその他の表現から、動物の内面の状態(リラックス、緊張、興奮、不安など)にスコア付けをし、アプリ上に記録される。最終的には、イギリスで飼われている動物全体の福祉の基準を上げることがこの取り組みの目的である。
ウェイトローズのエグゼクティブディレクターであるジェームズ・ベイリー氏は、同社のニュースリリースで次のように述べた。「一部の国では、家畜は“管理が必要な食料生産システム”だと見られがちですが、それは間違っています。イギリスが農業基準のリーダーであり続けるためには、これらの動物たちを “さまざまな感情と前向きな経験を知覚できる生き物だ” として認識することが大切です。」
今回のアプリの開発は、ウェイトローズが新たに打ち出した10年間の農業戦略の一部だ。他にも同社は農家への公平な支払いや責任のある調達、CO2削減などに取り組んでおり、非営利団体Compassion in World Farmingが打ち出す「欧州のベスト小売業者」にも3回連続で選ばれている。
動物たちに快適な住みかを提供して身体的な健康を保つだけでなく、内面的な健康も保とうと努力する。実際、人間がどれほど正確に動物たちの感情を理解できるかは未知だ。動物の過密飼いなどを行う工業型畜産ではなく、比較的「豊かな」環境で育てられていたとしても、牛や豚などの幸福度を私たちの基準に当てはめ、都合のいいように解釈して利用することに疑問もある。
しかし、これにより動物福祉の向上が行われている農家・行われていない農家を可視化することは可能になり、農業・畜産の透明性向上には役立つ。議論はあるだろうが、この取り組みには引き続き注視していきたい。
【参照サイト】Pioneering mobile app measures emotional wellbeing of animals