年々深刻化する海洋プラスチック問題。海に漂うプラスチックの80%以上が、漁業や漁船などの海で発生したものではなく、陸から発生して海に流出したものである(※1)ことはご存じだろうか。
世界中でSDGs(持続可能な開発目標)に向けての取り組みが進められ、「脱・使い捨てプラスチック」の動きが加速する中、いま焦点が当たっているものの一つは、私たちの身近でよく捨てられているプラスチック製のカミソリだ。アメリカの環境保護庁でも、アメリカ国内だけで毎年20億個のカミソリと詰め替え刃が廃棄されている、と推定している(※2)。
アメリカでは、一般家庭から使用済みのカミソリを回収して携帯用カトラリーにリサイクルするプロジェクトも進んでいるが、日本ではそのようなプロジェクトは立ち上がっていない。
そこで、使い捨てカミソリの国内トップシェアを持つ刃物メーカー貝印株式会社が、カミソリ自体の素材を変えてしまおうというユニークな発想に至った。ヘッドに金属を使い、持ち手部分に紙を使った、脱プラスチック仕様のカミソリ『紙カミソリ™』を開発。2021年4月22日のアースデイ(=地球のことを考えて行動する日)からオンラインショップで、そして2021年秋には全国の各小売店などでの販売を開始する予定だ。
構造は紙スプーンや牛乳パックを参考に、プラスチック製のカミソリと遜色なく持ちやすいハンドルを設計。ある程度までの温度(40°C)の水温に耐えるため、ぬるま湯で毛を剃ることができる。
素材がフラットな紙のため、薄型パッケージによる持ち運びの利便性や、グラフィックの自由度も向上した。持ち手の色も「この性別の人はこの色」とジェンダーの役割を強化するものではなく、どの性別の人でも手に取りやすい配色にしたという。
貝印は、これまでプラスチックで作られていた持ち手部分を紙にすることで、従来比98%のプラスチック削減をはかっている。また、重さはわずか4グラムで、5mmの薄型パッケージになり持ち運びやすく、とりわけ旅行者にとっては理想的だ。
日本の紙文化の歴史は古い。薄くても丈夫で、味わい深いテクスチャ-が魅力の和紙や、正方形の平たい紙や、多種多様な立体を造形する折り紙。折り紙は、英語でも「Origami」と呼ばれており、海外からの人気も高い。今回の貝印の紙カミソリは、新たな「日本発の紙文化」の誕生ととらえることが出来るかもしれない。
ただ、持ち手素材を紙に変えたとしてもカミソリ自体が使い捨てで、ごみがでてしまうことに変わりはない。この問題に対し貝印は、「今後、金属と紙のリサイクルも視野に入れて製品開発を行っていく」と発表している。彼らによる新たな紙文化の発展に、これからも注目である。
※1 McKinsey & Company 2015
※2 Environmental Protection Agency USA
【参照サイト】世界初!紙カミソリ PAPER RAZOR 2021.4.22 debut.
【参照サイト】使い捨てカミソリ国内シェアNo.1※1の老舗刃物メーカー・貝印 脱プラスチック※2とSDGsをコンセプトに世界初※3の「紙カミソリ™」を商品化!
Edited by Kimika