100人に1人がなる吃音(きつおん)。言葉を発するときに連続して一音が発せられたり、一時的に言葉が出てこなくなったりする状態を指す。そんな吃音は、ネガティブな印象が持たれやすい。たとえば、検索エンジンで「吃音(stammer)」と打ち込むと、「やっかい(plagued)」「難儀(affliction)」「欠陥(defect)」「ひどい障害(terrible impediment)」といった言葉が見受けられる。
そんな状況に対し、イギリスの啓発団体STAMMAの代表ジェーン・パウエル氏は「一般的に吃音の人は、弱い、自信がない、能力が低いと誤解されますが、それは偏見です。」と指摘。「吃音は、ゆっくりな話し方ですが、コミュニケーション能力を損なうものではありません。吃音をどのように克服するか、という質問がそもそも拒絶反応で、誤りなのです。」
同氏は、ネット上で使われている言葉やマスメディアが使っている言葉にそのネガティブイメージの一因があると考え、吃音に対する一般的な認識を変えるために、ウィキペディアと共に「Find the Right Words(適切な言葉を見つけよう)」というキャンペーンを展開した。これは、2020年10月の国際吃音啓発の日(ISAD)に、ウィキペディア上で、吃音に対する誤解やネガティブな印象を植え付ける言葉を、より適切な表現に書き換えるものだ。
具体的には、吃音の解説ページや、吃音を持つ歌手・俳優の解説ページの中で次のように内容を書き換えている。
- 欠陥(defect)→ 特性(trait)
- 神経性の愚鈍などもり(is nervous stuttering imbecile)→ 口ごもりがある(has a stutter)
- 完全に克服することはない(never fully overcome )→ うまく対応することを学ぶ(learn to manage)
- もがき苦労する(struggled)→ 困難がある(has difficulties)
- 取り除く(get rid of)→ より少なくする(stammer less)
吃音に対する一般の認識を変えるこのグローバルキャンペーンには、アメリカ、カナダ、オーストラリア、アイルランドの吃音協会も協力し、SNSで大きな反響があった。
STAMMAはまた、メディアに対して吃音に対する書き方のガイドラインを送るキャンペーン「It’s how we talk」も行った。また、出版以外に教育、企業採用などに対しても幅広く啓発している。
「流暢に話さない人も受け入れるべきであり、吃音の説明に使っている言葉を変えて、ネガティブさを取り除き、尊重と受容の文化を作り出す必要があります。“吃音”という話し方をする人々がいるのです。」パウエル氏はそう力説し、意識の変化を促している。
日本でも、近年「どもり」という言葉は差別的だとみなされるようになり、メディアなどで使われる機会もずいぶんと減った。大多数の人々とは異なる特徴を敬遠したり排除したりするのではなく、違いや多様性を認め合う社会を築いていけるといい。
【参照サイト】FIND THE RIGHT WORDS CAMPAIGN
【参照サイト】STAMMA & WIKIPEDIA TEAM UP TO LAUNCH GLOBAL CAMPAIGN TACKLING THE HARMFUL LANGUAGE AROUND STAMMERING
Edited by Kimika