「図書館には厳粛な雰囲気が漂っている」「本は静かな環境で読むもの」と思っている人は、多いかもしれない。そんなイメージを覆す図書館が、中国湖南省の坪坦という村に誕生した。
「坪坦書屋(Pingtan Book House)」という図書館は、地元の子どもが本を読むだけでなく、遊べる場だ。子どもたちは、館内を元気に駆け回ったり、笑いあったりして、ふと気が向いたときに本を手に取る。
香港中文大学の研究組織である「Condition_Lab」が、坪坦書屋の設計や建築に携わった。同組織は、「実務的な世界と学術的な世界が、離れすぎているのではないか」「建築士が研究し、学者が建ててもいいのではないか」という疑問がきっかけとなり立ち上がった。
Condition_Labは、村の人々と尊重し合える関係を築くことを大切にしている。坪坦書屋は、地元の小学校の依頼により建てられたという。家でも学校でもない、子どもたちがリラックスできる第三の居場所になることを目指している。
また、異なる言語・文化背景の相手と連携して仕事をするために、しっかりと時間をかけて、現地の建築士や大工とコミュニケーションを取ったという。
パンデミックの影響で、香港から湖南省まで移動できなかったときは、WeChatを積極的に活用。プロジェクトをゆっくり進めることが、Condition_Labの特徴だ。
村の様子を見ると、働く世代が大都市に行き、村に残ったお年寄りが子どもを育てるケースが多いという。坪坦書屋を訪れる子どもたちに、地元の魅力を感じ取ってもらうことが、プロジェクトに携わった人たちの願いだ。
人の手の温もりを感じさせる、坪坦書屋。これも、建物の大切な要素ではないだろうか。
【参照サイト】Pingtan Book House
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