2021年3月18日から21日にかけて、一般社団法人Ecological Memesがグローバルオンラインフォーラム「Ecological Memes Global Forum 2021」を開催。「あわいから生まれてくるもの ー人と人ならざるものとの交わりー」をテーマに、ビジネス・アート・エコロジーの領域から第一線を切り拓く多彩なゲストによるセッションが行われた。
今回の記事では、土に還るおむつを起点とした循環サイクルを実現するベルリン発のスタートアップ・DYCLE(ダイクル)共同創業者 松坂 愛友美氏による、「リジェネラティブ・ビジネス ー人と人ならざる生命の循環と再生ー」のセッションを取材した。「サーキュラー」ではなく「リジェネレーション」のビジョンの背後にある想いや、ブルーエコノミーの原理原則など、リジェネラティブなビジネス実践の本質に迫った。
話者プロフィール
松坂 愛友美氏
DYCLE 共同創業者
DYCLE(ダイクル)共同創業者。ドイツ・ベルリン在住。コンセプチュアルアーティストとして人と自然の関わり方に着目し、ヨーロッパやアジアをはじめ世界各国で精力的に制作活動を行っている。より大きなインパクトを起こすために2015年に有限会社DYCLEをベルリンで設立。堆肥化可能なおむつを通した循環型かつRegenerative型経済の普及に取り組む。https://dycle.org/en
話者プロフィール
小林泰紘氏
エコシステミック・カタリスト
一般社団法人Ecological Memes 共同代表・発起人・株式会社BIOTOPE 共創パートナー
世界28ヶ国を旅した後、Impact HUB Tokyoにて社会的事業を仕掛ける起業家支援を行う。その後は、個人の生きる感覚を起点とした企業での事業創造を支援。BIOTOPEにて幅広い業界での戦略づくりや事業開発を手がけたのち、独立。現在は、循環・再生型社会に向けた企業の未来ビジョンや事業づくりを行うカタリスト・共創ファシリテーターとして活動。座右の銘は行雲流水。趣味が高じて通訳案内士や漢方・薬膳の資格を持つ。イントラプレナー会議主宰。株式会社BIOTOPE 共創パートナー。一般社団法人 EcologicalMemes 代表理事。
自然界にある「5つの王国」
セッションの初めには、松坂さんによるDYCLEとリジェネラティブなビジネスモデルのエッセンスに関するプレゼンテーションが行われた。
「DYCLE」とは、「Diaper(おむつ)」と「Cycle(循環)」を合わせた造語。DYCLEのビジネスモデルは、グンター・パウリ氏が提唱している経済システム「ブルーエコノミー」という理念に基づいている。自然の生態系から着想されたブルーエコノミーは、「成長の限界」を克服し、「ゼロ・エミッション」を実現する経済モデルだ。具体的に、彼の著作『ブルーエコノミーに変えよう 100個のイノベーションで、10年間に、1億人の雇用をつくる』では、自然への見事な適応力によって、100個のイノベーションが10年間に1億人の雇用を生み出すということが示されている。
ブルーエコノミーには様々な基本理念がある中で、本セッションではDYCLEが特に意識している3つの理念が紹介された。1つ目は「自然界の5つの王国」を利用してビジネスを行うこと、2つ目は「システミック・デザイン」を用いること。3つ目は「自分の持っているものから始めよう」という理念だ。
松坂さん:1つ目の「自然界の5つの王国」についてですが、これは生物学者のリン・マルグリス氏たちが提唱したものです。地球をつくっている5つの生命とは、バクテリア、プロティスタ、きのこ、植物、そして動物であり、それぞれに「王国」があります。例えば、私たち人間は動物王国の一員です。彼女いわく、地球は構成する要素をバラバラに切り取ったり分解したりすることができない複雑な器官を持っています。この自然界の5つの王国の住人全てが一緒にコラボレーションしながら世界を作っているのです。全ての要素と一緒にコラボレーションしながら世界を作るというのは、ビジネスをする場合も同じだと考えています。
連鎖的に新しいものを生み出す「システミックデザイン」
2つ目に紹介された理念は、「システミック・デザイン」だ。これは、「一つの生産活動で生まれた製品やエネルギー、ゴミなどは全て次のシステムの素材になるべきだ」という考え方。具体的にDYCLEのビジネスを例にして説明がなされた。
松坂さん:まず、乳児の便が付着したおむつは回収バケツに投入され、発酵が始まります。通常、便はゴミとして廃棄されますが、自然界では発酵する際の素材になっているのです。ここに、他の「王国」の住人である微生物が入っている炭の粉を一緒に混ぜ、嫌気性発酵を促進させると同時に消臭します。バケツが満杯になったら保育園へ持って行き、その後コンポスト会社に運ばれ、そこでコンポストが行われます。そうすると、1年後には上質な堆肥が出来上がるのです。
大量にできた堆肥は、今度は素材として苗床を育てる会社や有機農家に運ばれ、果物やナッツの木を植える際に使われます。数年後にりんごの実がなると、それらからお茶やジャムなどの食品を作ることができ、地域ビジネスが育ち、さらに果物の木を冬に剪定する際には枝から炭を作ることも可能です。このように、自然界では芋づる式に複数の成果物が出来上がり、複数の収入源が作られていくのです。
また、そうした地元のオーガニック食材を食べ、健康的な生活を送る母親の母乳を飲む乳児の便には乳酸菌などの良質な菌が多く含まれています。これらの菌は、多種多様な微生物が生息する生きた土を作る上で重要な素材になります。
次に、こうしたシステミックデザインに沿って、普段売られている既存の紙おむつの流れを比較して見てみた。
この図は「リニア・フロー」と呼ばれ、生産から消費における一方通行の流れを指している。ほとんどの使い捨てのおむつはプラスチックでできており、赤い危険マークがある部分は健康や環境に悪い物質を指し、自然界では連鎖することが不可能なものだ。
松坂さん:赤ちゃんが既存の紙おむつを使用した場合、まず原油を取り出すところから始まります。その後石油にし、それを工場に運び、ポリエステルやポリエチレンなどの化学繊維に加工して不織布になる。また、紙おむつの原料であるパルプ素材を作るために、化学肥料を多く使用し、モノカルチャーとして育てられた松林が伐採される。その後製材所に運ばれ、大量の水やエネルギーを使いウッドチップやパルプ素材を作り上げ、綿のような吸収素材を作る。こうした過程の中で、すでに多くの汚染物質が排出されていることが分かりますよね。
次に、尿をゼリー状に固める「吸収性ポリマー」という科学的な粉を入れ、こうした素材をおむつ工場に輸出します。工場では、1分間に何百枚というスピードでおむつが大量生産され、それぞれの国に輸出されます。輸出後は倉庫に運ばれ、そこでもう一度製品としてパッケージし直され、その後小売業者に運ばれ、ようやく消費者に商品が届くのです。使用後のおむつは破棄され、ゴミとして焼却所で燃やされると、二酸化炭素やメタンガスを排出し、微量分子のゴミが空気中に放出されます。焼却されない国では、埋立地で埋め立てられて何百年もの間土に残る。このようにして、土壌汚染や水質汚染、海中汚染が進んでいるのです。
上記の図では、左側がリニアフローという既製の使い捨ておむつ、右側がDYCLEが提案しているシステミックフローのおむつで生み出されるものを示している。システミックフローにすると自然からの恩恵を受けることができ、多種多様なものが芋づる的かつ派生的に作られていく。
松坂さん:この点が、「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」との違いです。サーキュラーエコノミーでは、製品の素材をプラスチックからコンポスタブルなものに変えるといった、一つのものを他のものに置き換える「リプレイスメント(代替)」がよくあります。しかし、実際に自然界には「サーキュラー」なものは存在せず、先述した5つの王国の住人たちがコラボレーションし、一つの活動にいくつもの存在が作用しあい、複数の新しい存在が生まれていくのです。そのため、自然派生的に生まれる流れに沿わない限り、新しい価値を生むことは難しくなります。新しい価値をどれだけ生めるのかという視点で考えていくと、「サーキュラーエコノミー」と「リジェネラティブエコノミー」の違いが見えてきます。
「リジェネレーション」という考え方をビジネスに繋げると、複数の産物が商品になり得ることが分かりますよね。例えば土ができると木を育てることができ、そこでオーガニックな有機の食べ物が作られます。もちろん、一年目から全部を実現することは不可能ですが、この自然の摂理に従っていくと、いくつもの自然スタイルの恩恵を受けることが可能になるのです。
「自分が持っているものから始める」という精神
DYCLEに影響を与える「ブルーエコノミー」の理念の3つ目は「自分の周りのものから始める」というメッセージだ。具体的に、松坂さんがDYCLEを創業した背景についてお話があった。
松坂さんは、最初からビジネスを勉強してDYCLEを立ち上げたわけではなく、もともとアーティストとしての経験があった。当時、松坂さんは自分の尿を集め、それを科学者たちと衛生的な土にし、その土で野菜を育て、それらを食べ、排泄をするという「All My Cycle」というビデオ作品を制作していた。
松坂さん:その当時私が持っていたものは、「こういうことができるんだ」という感覚、衛生的な土を作るノウハウ、ベルリンにある植物園の人たちとのコンタクトでした。また、お父さんやお母さんと話す機会もありました。私がその当時持っていたものやアーティストとしてやっていたプロジェクトを集結させて、DYCLEのビジネスモデルを作りました。
“Start with what you have.”という言葉は、DYCLEにとっても大切な理念だという。例えばDYCLEがおむつに使っている素材は、同社が拠点を構えるベルリンの郊外にある麻工場から出た副産物だ。このように自分たちの身近なところからできることを考えていき、様々な素材をドイツ国内から取り寄せ、コーヒーかすや炭の粉、木くず、麻の繊維など、自分たちに身近にある素材からおむつをデザインしていった。天然のおむつは大量生産の機械で作るのが難しいため、手作りで製造し、実際に子どもたちに何回も使用してもらいながら改良している。
松坂さん:今回は一人でDYCLEについて話していますが、私の後ろには100人以上の市民の存在があり、それぞれが時間やネットワーク、アイデア、夢、資金、そして時間を投資してくれています。一人の力、一つの会社だけではこういった複雑なシステムを作り上げることはできません。本当にたくさんの人や社会が手と手を取り合い、5つの王国の住人がコラボレーションしながらシステムを作り上げています。
コミュニケーションツールとしての設計図
最後に、 リジェネラティブビジネスのあり方について深堀りすべく、小林さんと松坂さんによるディスカッションが行われた。
小林さん:まず、システミック・デザインについてもう少し伺いたいのですが、DYCLEのモデルはどのように生まれていったのでしょうか。最初からブループリントがあったのか、様々なネットワークや今自分たちが持っている資源の繋がりの中から次第に現れていったのか。あるいは、実践していく中でどのような気づきがあったのか。そのあたりを伺えますか。
松坂さん:システミック・デザイン自体は最初に作りましたが、訂正を多く入れています。なぜかというと、こういう社会であってほしい、こういう風に循環してほしい、といったビジョンを考えるとき、どのような道のりで進めるかが重要になってくるからです。そうしたイメージは、私が会社を作る以前にアート活動をしていたときにすでに感覚として持っていたことでした。
その上で、炭の粉や微生物を入れたら土ができ、土を人々に分けたらハーブや木を育て、木から果物を採れば様々なジュースができるなど、多くの人や専門家にアイデアを出してもらったり、相談をしたりするコミュニケーションのツールとしてシステミック・デザインを使っていました。
また、松坂さんのプレゼンテーションの中にあった「サーキュラーエコノミー」の話に関して、小林さんからは物事の繋がりを捉える人間の感覚の重要性が話された。
小林さん:サーキュラーエコノミーでは「Closed Loop」、つまりループを閉じるという考え方がベースになりますよね。「システム」というのはどの系で捉えるかによるので、それ自体に良い・悪いはないないのですが、いくつかの企業で事業開発を伴走させていただく中で、ループを閉じることばかり考えてしまうと、「結局資源を置き換えただけ」といったように、そもそもの本質を見失ってしまうことがあると感じています。一方で、松坂さんの中にはアーティスト時代に土や微生物とのつながりや自然なインタラクションの感覚がすでに育まれていましたよね。リジェネラティブなビジネスをデザインしていく上では、そこに携わる私たち自身がそうした生態系に対するアウェアネスや想像力を持ってシステムを描けるかどうかがすごく大事になってくると思います。
次に、システミック・デザインに関わるコミュニティデザインについてのディスカッションが行われた。
小林さん:生物多様性が軸となるリジェネラティブ・ビジネスにおいては、自然生態系から芋づる式に現れてくる多種多様なものを少しずつ価値に転換していくマルチインカムモデルが重要になっていくと思うのですが、生態系に本気で向き合えば向き合うほど、人間がコントロールすることができない、複雑なものだということがわかってきます。それらを安定的・効率的に生産しようと管理したものがモノカルチャー的な自然との関わり方だと思うのですが、そこから抜けだしていく難しさなどはあったでしょうか?
松坂さん:色々な方法やアイデアが出てくるのですが、アートプロジェクトではなくビジネスをしている以上「競争」に耐え得るモデルである必要があると思います。関わってくれている人と一緒に社会を作っていくことを考えたとき、何を第一優先にしていくか、どれが一番最初の収入源になるのか、といった点はシビアに決めていかねばなりません。
アイデアに可能性があると感じた時に、どれから始め、どれがDYCLEの理念に合い、ビジネスとして存在し得るかを考え、選択するプロセスに多くの時間をかけています。
松坂さんはリジェネラティブ・ビジネスは、「忍耐が必要であるという点で子どもや木を育てることと似ている」と話した。さらに、ビジネスを広げていく際には、同質のものをそのまま世界中に広げていくのではなく、その地域に根差した形でノウハウを共有していく分散型のビジネスモデルを採用していく必要があるという。
松坂さん:ドイツのライプツィヒやハンブルク、またフランスなどの他国でもこのおむつを作りたいという話があるのですが、私たちは分散的にこのビジネスを広げていきたいと思っています。つまり、誰かがフランスでこの事業を始めたいときに、私たちが行うのではなく、ノウハウとスキルや経験を現地の人たちに教え、彼らが自分たちの地域にある素材でおむつやシステムを作って行ってほしいと考えているのです。
例えば、日本で土に還るおむつを作る場合、ドイツで製造するおむつの素材である「麻」は日本で多く生産されていないため、同じドイツ型のおむつを生産するのが難しい。ただ、竹や藁、アシなど他の素材の可能性を見出すことはできますよね。そうした、世界各地の地域の素材で土に還るおむつを製造し、そのノウハウや知識を共有できるようなネットワークをDYCLEで作っていきたいと思っています。
小林さん:まさに、先程のブルーエコノミーの原則の一つにあった、“Start with what you have.”ですね。そもそもバクテリアや菌類など「5つの王国」とコラボレーションするということは、その土地に根をおろしていくということで、リジェネラティブなビジネスというのはその土地のローカルな気候や風土と切り離せないということ。これは、地域を素材を活かすデジタルファブリケーションの流れなどとも相まって、ビジネスの広がり方やコラボレーションの仕方にも大きく関わっていくポイントだと思いました。
小林さん:DYCLEの取り組みは、「co-thriving(共繁栄)」のためのエコシステムデザインだと思っていて、排泄という人間の根源的な営みを通じて、「生命の連続性を感じながら子どもたちが育っていける社会」というリジェネラティブなビジョンが素晴らしいと感じています。「リジェネラティブ・ビジネスをやりたくて始まったわけではない」というお話もありましたが、こういうビジョンはどこから生まれたのでしょうか。
松坂さん:最初からリジェネラティブ・ビジネスをやりたいと思って始めたわけではなく、私にとって一番のパッションは「土をつくること」でした。土ができたら、次に何かが生まれるじゃないですか。数年前堆肥ができるおむつを製造していたスタートアップが破産してなくなったので、自分たちでおむつを作らないといけないことになったという経緯がありますが、根底にはもともと土をつくることへに対する私の異常な憧れがありますね。
小林さん:そういった偏愛的な部分ってすごく大事だと感じます。自分も畑の土をいじったり、ぬか床を作る中で、手を入れて混ぜた時にその感触や匂いが毎日異なり、人間の目には見えない微生物たちが生きているのを感じてます。「土と内臓」の著者デイヴィッド・モンゴメリーは、「The Hidden half of nature(自然の隠された半分)」、つまり微生物世界との共生関係こそが人と自然の二項対立を乗り越えていくための今世紀最大の課題だと書いています。好奇心やワクワク、心地よさを起点に世界に向き合っていくきっかけや身体体験を未来の子どもたちに残したいと強く思います。
今回のフォーラムのテーマは「人と人ならざる存在との交わり」であり、DYCLEの「5つの王国」とのコラボレーションの話と繋がる。普段の生活において、そうした「王国」と繋がっていなかったり、そこに対する感覚を閉ざされていたりすることが多い中、コラボレーションをしていくためのヒントが、“Start with what you have.”という言葉だ。すでに私たちが持っていることや感じていること、ネットワークなどから始めてみることが大切だと言えるだろう。
ローカルに展開する「分散型システム」の重要性
続いて、「ブルーエコノミー」についてのディスカッションが展開された。まず小林さんから、なぜDYCLEの活動はブルーエコノミーに基づいているのかという質問があった。
松坂さん:理由があってブルーエコノミーを選んだわけではなく、繋がりの中でメンターとなったのが、ブルーエコノミーを提唱しているグンター・パウリ氏でした。ブルーエコノミーの基本理念の中では、競争的であり“Locally available(現地で利用できる方法)”でありながら、自分一人が利益を得るのではなく基本的にオープンソースなビジネスが推奨されており、DYCLEもその理念に共感しています。DYCLEの活動拠点はドイツ・ベルリンですが、他の国でも土に還るおむつを生産し、実践できるところまで繋げていきたいと思っています。
現在DYCLEのおむつを実践してみたいと発信している国は世界で45か国以上あり、その40%が発展途上国だ。例えば、タヒチでバニラ栽培をしている人は、おむつのゴミ問題が深刻で、使い終わったおむつを海外へ輸出するコストが膨大だと話しているそうだ。おむつ自体を輸入するだけでなくゴミも輸出している現在、松坂さんもこういった問題をどうにかしたいという想いを抱いていた。
松坂さん:私たちはドイツでスタートアップとして活動していますが、世界中の人が実践できるようなビジネスモデルを作らないといけないと思っています。おむつを製造する機械は数百万ユーロする高額なものですが、それだとアフリカ諸国などの途上国でそのビジネスを再現できません。私たちは現在、おむつの機械をベルリンで作っているのですが、大きな機械を使用せず、スローな生産ラインで製造しています。誰かが日本やタヒチ、南アフリカやガーナでこのビジネスモデルを実践したいときに少ない投資でこのビジネスが始められるように、基本的にオープンソースで情報公開をするビジネスモデルを作ろうと思っています。
今後はおそらくそういった分散型のビジネスの流れになっていくと思いますね。チョコレートのように、地球を何周も回って生産し最後に食べるというあり方は成り立っていかないということをほとんどの地域の人々が理解しているはずなので、次のシステムとして「分散型」というのはよく考えられていることだと思います。
小林さん:今回のテーマでもありますが、人の世界に閉じずに自然環境や他の生命、見えない存在とも繋がり合っていく社会を考えたとき、その土地の資源にアクセスしていく「Locally available」と、「ビジネスのオープンソース化」、「分散型モデル」あたりはセットになっていきそうですね。その土地の気候や風土、そこに住んでいる人たちの暮らしに根ざし、生態系の多様性の中でローカルに自然とチューニングされていくようなビジネスの未来象が松坂さんのお話から現れてきたように思います。本当にありがとうございました。
編集後記
SDGsをはじめとしたサステナビリティや、サーキュラーエコノミーなど様々な取り組みがあるが、その根底にある大量生産モデルからの脱却はなかなか困難だと感じる。セッションの中でも言及されていたように、生産・消費・廃棄においてグローバルに展開されすぎたことで環境問題等の諸問題が深刻化している。
今回取材したDYCLEは、従来のビジネスモデルの核心をつき、生物多様性というマクロな視点とローカリティというミクロな視点を編み合わせてモデルを構築している点が印象的だった。「リジェネラティブ・ビジネス」とは、地球環境の仕組みそのものに寄り添い、その営みの流れに経済をはじめとした人間活動を乗せていくことなのではないだろうか。
従来のグローバル資本主義は、同じものを世界各地に拡散する方法で「発展」してきたが、今後は革新的なモデルや考え方を独占せず他者に開放し、諸問題の解決に向けた歩みを共にしていく必要があるだろう。まずは、自分が今持っているものを振り返り、少しずつ行動を起こしていくことが、リジェネラティブ・ビジネスへの第一歩だと感じた。
【参照サイト】DYCLE
※今回の「Ecological Memes Forum 2021」の各セッションの映像は、Ecological Memesの公式サイトで販売されている。
※本記事で紹介したセッションはこちら:「リジェネラテイブ・ビジネス – 人と人ならざる生命の循環と再生 -(松坂 愛友美氏)
Edited by Megumi